2013年12月22日日曜日

『秋刀魚の味』

☆小津安二郎監督/1962年/日本

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・神保町シアター

☆なぜ見たか・・・せっかくスクリーンで見られる機会に見ようと思って


小津監督の作品は18歳のときに2本くらい見たっきりで、
当時の私には地味!!という印象が強かった。
別に退屈はしないし、『東京物語』における原節子のモノマネとかしてたけど。
でも、増村さんとか川島さんとか、
もっとテンポよく見られる映画のほうがどうしても面白く感じて。
それでか7年も見ずにいたのです。

で、秋刀魚の味。
言葉もないわ。

寂しくものんびりと酔っぱらう笠智衆さん。
その背中、もうお茶を入れてくれる人がいなくなってしまった彼の、その背中を見て、
私はもう滂沱の涙。心が震えに震えた。
なんなの、笠智衆。
誠実、飄逸、ユーモラス。
涙は見せずに背中で語る。



あの不思議な会話(ありますよ、いやーないですよ、いやあるよ、ないよ、あるよ・・・が永劫続く)、
10代のころは違和感すら有ったあの会話のリズムも、なんだか心地よいタメに感じられた。

脇を固める面々も活気にあふれて魅力的。
笠智衆の飲み仲間ね。
ほどよくゲスくてほどよくダメで、人生はロクでもない、かつ素敵、と思わせてくれる。
バーのマダム、岸田今日子もハマり役。すばらしい!
何より、笠智衆の娘役、岩下志麻さんよ。
輝くばかりの美しさ。



編集の面では、小津慣れしていない私にとっては、その唐突さにビックリするばかり。
カットが切り返ったと思いきや予想外の場所に人が立ってたりして、
うまくいえないけどエッ!!て感じで(うまくいえないにも程がある)、とにかく「唐突」という印象。
カットレベルの話でなくとも、
あんだけズルズル、結婚するのしないのするのしないの誰とするの彼とするの言ってたくせに、
結婚式シーンとかは皆無って!という驚きもありました。
捌き方がすごい、斬新過ぎる。
そうかと思うとカラショットの連続で泣かせてきたり。

苦みとうまみいっぱいの人生、本当しょうもないけど、肯定して生きたい。
驚嘆すべき作品に出会えました。ありがとう小津さん。
これが遺作というのがまた、なんとも。


2013年の暮れに、小津さんにノックアウトくらうとはね!!!
作品ほぼ見てないので、これから楽しみいっぱい。えへへ。

2013年12月19日木曜日

2013年に見た映画の振り返り

2013年も残すところあとわずか。
今年見た忘れがたい映画の数々をピックアップしてみましょう。

ランキングとかは出来ないので、順不同。

【今年公開の作品から10本】
☆ムーンライズ・キングダム(ウェス・アンダーソン/2012/アメリカ)
☆ザ・マスター(ポール・トーマス・アンダーソン/2012/アメリカ)
☆ホーリー・モーターズ(レオス・カラックス/2012/フランス、ドイツ)
☆ローマでアモーレ(ウディ・アレン/2012/アメリカ、スペイン、イタリア)
☆ポルトガル、ここに誕生す(オムニバス映画/2012/ポルトガル)
☆ラヴ・イズ・パーフェクト・クライム(アルノー&ジャン=マリー・ラリユー/2013/フランス)
☆眠れる美女(マルコ・ベロッキオ/2012/イタリア、フランス)
☆罪の手ざわり(ジャ・ジャンクー/2013/中国、日本)
☆女っ気なし(ギヨーム・ブラック/2011/フランス)
☆ゼロ・グラビティ(アルフォンソ・キュアロン/2013/アメリカ)

ラヴイズ~はTIFFで見たけど、日本公開は未定だと思う。
罪の手ざわりはフィルメックスで見た。来年日本公開!
今年もいろいろとおもしろい作品がありましたね。
両アンダーソン、カラックス、ウディ・アレンあたりはさすがの域。
拾い物はギヨーム・ブラック監督。とっても素晴らしかった。今後も楽しみ。
あと、こうしてピックアップ作業をしていて気付いたけど、邦画全然見なかった・・・本当に。
いろいろと気になる作品はあったのに、無念。


【名画座系で初見だった作品から5本】
☆マリア・ブラウンの結婚(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー/1979/西ドイツ)
☆天国の門(マイケル・チミノ/1980/アメリカ)
☆ヴァン・ゴッホ(モーリス・ピアラ/1991/フランス)
☆喜劇 特出しヒモ天国(森崎東/1975/日本)
☆砂時計(ヴォイチェフ・イエジー・ハス/1973/ポーランド)

名画座にあんまり行かなかった・・・というより、
緑の光線とかカリフォルニア・ドールズとか、過去に見た作品をいっぱい見た!
初見は少なかったんだなあ。
イメフォのピアラ特集では、ゴッホと『悪魔の陽の下に』が印象的。
ヒモ天国は最高でした。最高のひとこと。


【ビデオで初見だった作品から15本】
☆冒険者たち(ロベール・アンリコ/1967/フランス)
☆密告(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー/1943/フランス)
☆カメレオン(阪本順治/2008/日本)
☆ユリイカ(青山真治/2000/日本)
☆コックと泥棒、その妻と愛人(ピーター・グリーナウェイ/1989/イギリス、フランス)
☆アンダーカヴァー(ジェームズ・グレイ/2007/アメリカ)
☆黄金の馬車(ジャン・ルノワール/1953/フランス、イタリア)
☆見知らぬ乗客(アルフレッド・ヒッチコック/1951/アメリカ)
☆北北西に進路をとれ(アルフレッド・ヒッチコック/1959/アメリカ)
☆コンドル(ハワード・ホークス/1939/アメリカ)
☆私はゾンビと歩いた!(ジャック・ターナー/1943/アメリカ)
☆明日は来らず(レオ・マッケリー/1937/アメリカ)
☆ゾンビランド(ルーベン・フライシャー/2009/アメリカ)
☆愛の残像(フィリップ・ガレル/2008/フランス)
☆召使(ジョゼフ・ロージー/1963/イギリス)

おてもと(フリーペーパー)でフランス映画の企画をやったので、
今年の前半はフランス映画ばっかり見てた気がする。
後半のトピックとしては、以下の三点。
1.ヒッチコック先生に開眼
2.空前のジェシーブーム到来!ジェシー・アイゼンバーグさんに心酔する日々。
3.ケイリー・グラント氏の軽妙洒脱さにやられる。
結果的にアメリカの映画をいっぱい見た。
ジェシーくんに関してはもう、本当に素敵、としか言うことはありません、
今後とも応援する!!!


あと12日の間に、このリストに入り得るような作品にまだまだ出会えますように。
そして来年もたくさんおもしろい映画を見られますように。

2013年12月18日水曜日

ポーランド映画祭2013

もうブログの存在をからっきし忘れて毎日を過ごしていたけれど、
忘れがたいポーランド映画祭の記録を残しておきたいので、久しぶりに開いてみた。
パスワード覚えててよかった~~。

ポーランド映画祭2013 イメージフォーラムにて。
11月30日から、12月13日まで開催してました。

全22作品、心を惹かれてやまなかったので、フリーパス(8000円)購入。
無理に無理をかさねて12作品を鑑賞。(当初は15本くらい見れると思ってたのに、なんか誤算)
かよったねー、かよったかよった。イメフォ。

簡単に、一言ずつ感想を残しておきましょう。パンフレット掲載順に。


☆夜行列車
 (イエジー・カヴァレロヴィッチ監督/1959年/ポーランド)
廊下まで人がビッチリ居る夜行列車内の場面が延々と続く。
だから、外に出たときはすごい開放感。
ポーランド美女(三白眼)、気怠いジャズ、陰影の深い画面とか、
雰囲気ばかりが先行してた感はあるものの、その雰囲気はまぁ好きだった。
人物を詳細に描写することを意図的に辞めているような不思議な印象。

☆さよなら、また明日
 (ヤヌシュ・モルゲンシュテルン監督/1960年/ポーランド)
モルゲンシュテルンて。すごい名字だ。
余談だけどポーランドは名字天国らしくて、同姓の人が非常に少ないんですって。
人口が三千八百万くらいで、名字は四十万以上らしいですよ!!!ポーランドすご!

で、映画。
これはとっても好き~~~。青臭いほどに若々しくて、ぎこちなくてイタい恋愛の映画。
ポーランド青年とフランス女性の関係性がおもしろかった。
文化や言語や性差の障壁(=バリエラ)を、重苦しい印象をまとわずに描いてる。
ポーランドの街なかで当たり障りのない会話をする彼らをずっと撮っていて、
なんかもう、実にヌーヴェル・ヴァーグ。
主役の青年が小劇団の人という設定で、
劇団のみんなで酔っぱらって朗々と歌うシーンなんか本当に自由闊達な雰囲気に満ちていた!
この青年、ズビグニェフ・ツィブルスキ氏は、
今回の映画祭で他の作品でも何度かお見かけした。
ズビグニェフ・ツィブルスキ。この名前を覚えられる気が全然しないわ。
そして音楽は、我らがクシシュトフ・コメダ氏。
ピアニスト役でちょろっと出ています。

☆不運
 (アンジェイ・ムンク監督/1960年/ポーランド)
今回の映画祭で私が見たなかでは、最もコメディ色の強い作品だったかも。
周囲に溶け込みたい男・ピシュチクは、ドコに行っても何をしても、
不運のせいでまわりに適応できない。居場所がない。挫折に次ぐ挫折。
並み以上なんて求めていないのに、世間並みの幸せすらつかめない。
そんなミスター不運を描いたブラックなコメディ。
浅薄・不器用・臆病の三重奏は自分を見ているようでなんとも。悲しくなっちゃうよ!!!
カワイソウな人生も、突き放して見れば、
そうロングショットで見れば、喜劇になってしまう。
誰か私の人生も笑い飛ばして。

☆沈黙の声
 (カジミェシュ・クッツ監督/1961年/ポーランド)
主人公が、なんだか不思議な役どころでした。
アンチヒーローというか、ダメ男というか、何かんがえてるの?という感じの。
こういう男に引っかかりたくないものです。
クッツ監督は『沈黙』という作品も見たけれど、ショットがきれい。
斬新かと思いきや堅苦しい、みたいな、予想を裏切られるようなショットが続く。
あと余談だけどこの映画、ハエがすっごいたくさん居て気になった・・・!
男と女が甘めに話してるのに、男の背中にハエ2匹、とかね。
ポーランドはハエが多いのか??他の作品であまり見なかったと思うけど。

☆沈黙
 (カジミェシュ・クッツ監督/1963年/ポーランド)
沈黙を守る少年、司祭、街の人々の映画。
なぜ沈黙し続けるのか判らないのは、私がカトリック教徒じゃないから??
少し説教くさいというか、司祭役の俳優さんが大仰だし、
主人公の少年の聴力を表すのに耳を大写しにするセンスも「???」でした。
雪のシーンとかきれいなんですけどね。
ちなみにこの映画にはハエではなくネズミがいっぱい出てきました・・・

☆不戦勝
 (イエジー・スコリモフスキ監督/1965年/ポーランド)
スコリモフスキ監督!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!大好き。
三年前に見てドハマりした映画『バリエラ』の監督で、
私がポーランド映画に興味を持つきっかけになった人。
なんとティーチインで、御本人がおいでなすってね、
非常にユーモラスで愛すべきおじいさんでした。えへへ。

監督自身が主演も兼ねてて、街をうろうろと動きまわる。
『バリエラ』を初めて見たときから一貫して、
スコリモフスキ監督作品の「運動性」とそれを撮るカメラワークに驚嘆させられ続けてる。
本当すごいよ。
この作品の長回しもちょっと驚異的。
そして不思議なユーモラスさね。
ラストの皮肉な苦笑い加減たるや、ちょっと似たものがない。
最高!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

スコリモフスキを知らない人と文化的な話をしても、時間の無駄にほかならない!
みたいに中原昌也さんが言ってた!あはは!


☆サラゴサの写本
 (ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督/1965年/ポーランド)
これは今回の映画祭で最長尺かな。182分。
ポーランド映画祭2013の〆作品でしたー。ハス!!
夢のなかの夢のなかの夢、みたいな映画で、頭のなかはゴッチャゴチャ。
何回か見たら合理的に完全に解釈できるんだろうけど、私の頭は錯乱したーー。
狂おしいほどおもしろい。
ツイッターに書いたけど、ラブレー読んだときみたいな圧倒感がありました。
本当にね、こんなにお金かかってそうな作品があるって時点でもう驚いた。
あと、ギャグの間の取り方が日本と似てる??!!
ブルーレイ来年発売。買えるようにがんばろう!

☆戦いのあとの風景
 (アンジェイ・ワイダ監督/1970年/ポーランド)
今回の映画祭はワイダ特集みたいのが組まれて7本上映されたのだけど、
私は2本しか見られなかった!残念!
そして、2本ともあまりハマらず!!残念!
なんだか窮屈で小難しくて説教ぽい映画でした。。
ポーランド史に精通してないのも敗因?

☆夜の第三部分
 (アンジェイ・ズラウスキ監督/1971年/ポーランド)
コレはとても変な映画で、置いてかれた。
お話がよくわからなくなったのと、描写の気持ち悪さについていけず!残念!!

☆砂時計
 (ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督/1973年/ポーランド)
心から興奮!!!すごすぎるハス!
どうやったらこんな映画ができるのか・・・
バリエラの彼が彷徨い歩く異次元空間。
仕組みのわからない広大かつ唐突なセットと、流れるような移動撮影にクラクラしっぱなし、
打ちのめされた。呑み込まれたーーー。
ラストショットまで戦慄がとまらない。
素晴らしい映画体験をありがとうハス。
コレは未ソフト化なの、心底かなしい。紀伊國屋さん、コレもお願い!!!

☆鉄の男
 (アンジェイ・ワイダ監督/1981年/ポーランド)
ハスの182分はワクワクしどおしなのに、
ワイダの152分はかったるく感じてしまうのは一体・・・
いやあ長かった!!!
今回の映画祭で悲しかったことは、ワイダとわかりあえなかったこと。
来年はハス特集で頼みます。

☆イーダ
 (パヴェウ・パヴリコフスキ監督/2013年/ポーランド)
ジャパンプレミアは結局この1本しか見られず。
息をのむほどきれいなモノクロ画面で、満足。
主演ふたりの対照的な存在感がとてもうまいなと思った。
イーダの禁欲ヅラが印象的。
美しい、美しい映画。


はい。以上です。

今回の映画祭で、ポーランドに興味津々になっちゃった。
空前のポーランドブーム到来!!
ポーランド文学とか全然読んだことがないし、
ポーランド史の知らなさも痛感したので、お勉強しよう。
いつの日かポーランド旅行できるといいな、な!!!
とにかくポーランドブーム!

でも、12本も見たのに全然ポーランド語を習得できず。
はい(タック)、いいえ(ニエ)しか。ポーランド語難しいわ。

ともあれありがとうイメージフォーラムさん!!!2週間楽しかった!