2014年7月12日土曜日

『バード★シット』

☆ロバート・アルトマン監督/1970年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・新橋文化劇場(2か月くらい前に)

☆なぜ見たか・・・以前見たときの興奮が忘れられなくて


新橋文化劇場もなくなってしまう。。
この怒りと悲しみはどこにぶつけたらいいのかわかんないけど、
もう本当に、これ以上名画座がなくなりませんように。
シネコンばっかりあってもほんとにしょうがないし、つまんないし、
都市として価値が無い。
敢然として私は、名画座にかよいまくる。決然として。猛然として。


鳥のように空飛ぶことを夢見ている少年、ブルースターマクラウド。
野球場の地下に秘密の部屋を作って、トレーニングや研究にいそしむ毎日。
同じころその地域で、不可解な連続殺人が発生。
現場には必ず鳥のフン(バードシット)が落ちていて・・・というお話。


茶目っ気たっぷりの無法地帯、そんな感じ。
純粋でいて残酷、聖性と俗性のごたまぜ、繊細な狂騒、快楽しかるのち死。
映画を「分析」することの馬鹿馬鹿しさをあざ笑うかのような、映画。
アルトマンに一杯も二杯も喰わされよう!

主演はバッドコート。ひたむきな狂気を持つオタクっぽい役が似合ってる。
彼の行く先々にあらわれて彼を守るのは、サリーケラーマン。
いやー。アルトマン作品の「天使」は、トレンチコートを着てるね。
遺作の『今宵フィッツジェラルド劇場で』でもそうだった。


この作品はMASHと同年公開だけど、MASHのときよりだいぶ綺麗に見える・・・。

サリーケラーマンが服を脱ぐと、その背中はこんなふうになってる。

翼をなくした天使。

彼女が活躍するあのカーチェイスシーンの楽しさ!
すっとぼけたテンポで描かれるカーチェイスには、
アルトマンのニヤニヤ笑いが透けて見えるよう。
空飛ぶ車をスローでとらえるとこなんかもう、アルトマンここにあり、といった感じ。
いたずら心を感じずにはいられない。

車は空を飛ぶのに、人は。人類は。
セックスだけに満足して地上に縛り付けられた人類は空を飛べない。
繁殖以外の目的で性交をする人類は。

大団円、見世物の終わりを派手にしめくくるカーテンコール。
そのなかでひとり死んでいるバッドコートにズームするカメラの渇いた視線に戦慄。
物語は、潰えた夢をみはなして華々しく勝手に終わる。

とことんまでふざけて、一気に幕を引かれた感じ。

この映画の最大のおふざけは、ルネ・オーベルジョノワ演じる鳥類学者かも・・・
最初は「若干の鳥似」くらいだったのに、穀物っぽいエサをついばんだり、
背中が曲がってきたり、ついにはこんな姿に・・・


「少しずつ鳥に寄っていく」っていう設定がもう、ナンセンスのきわみというか、
ともすると幼稚園生くらいの発想な感じがして、
こんなことを凝りに凝ってやってるのがおもしろすぎる。
そして本当に鳥に似てくるルネさんよ。この人以外にできそうもない難役(?)

バッドコートを地上に引きずりおろすのは、シェリー・デュヴァル。


なんか口許がだらしなくてあまり好きになれないんだけど、
こういう不思議ちゃんの役をやらせたら本当うまいですね。
ウーパールーパーに似てると思ってたけど、この作品ではなんとなくシチメンチョウっぽい。

色っぽい女ではなくてこういうガリガリの不思議ちゃんにやられちゃうところが、
バッドコートだなーという感じがする。


新橋文化劇場というプチカオスで見られたのがまたうれしくて。


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