2014年6月29日日曜日

『虹を掴む男』

☆ノーマン・Z・マクロード監督/1947年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ボリス・カーロフ氏の顔面見たさに


これ、見終わってプレイヤーにディスク入れたまま放置し、つまりは返却し忘れて、
その足で祖父母宅に2泊してしまった。
帰宅してDVD見よー、と思って、「なんかプレイヤーに入ってる!!!!!」と心底驚いた。
そんで数年ぶりに延滞料金を払うはめになりましたとさ。
度し難いポンコツだと思う。
今後この作品のことを思い出すたび、苦虫の味が口中に広がることでしょう。

さりとてそんな苦虫風味とは無縁の楽しき映画、虹を掴む男。
(ていうか、クソな映画を延滞しちゃったら立ち直れなかったと思うので、
 この映画がおもしろかったのが不幸中の幸いだと気づいた。ありがとうダニーケイ)


原題は The Secret Life of Walter Mitty
これで画像検索かけたら、
先ごろ日本でも公開されたライフ!とかいう映画の画像がたくさん出てきてびっくり。
ライフ!ってこれのリメイクなんですね!(見てないからしらないけどたぶんそう)


出版社に勤めるウォルター(ダニー・ケイ)には、極度の妄想癖が。
例1:石鹸の広告を見て、「水」のイメージからか、
吹き荒れる嵐の中で航海する帆船の船長として活躍する自分を事細かに妄想。
例2:社長が新企画「病院ロマンスもの」(何それ)の案を出すやいなや、
天才外科医として活躍する自分を長々と妄想。
あまりにヒドい妄想癖で、母親からも社長からもフィアンセからもボンクラと思われてる。
そんな彼、ある日の通勤中、知らない女性に急にキッスされる。
その女性は彼の妄想に毎回登場する、夢の美女だった!
その出会いをきっかけにウォルターは事件に巻き込まれていく・・・というお話。

ダニー・ケイさん、すぐに妄想に浸るお坊ちゃんという役がピッタリ。
情けなさとカッコよさと甘さの絶妙なバランス。(7:1:2くらい)
コメディというのは器用な人にしか出来ないのだなあと改めて思った。

声もいいから、妄想時のナレーションもなんかこっちまで妄想の世界に連れてってくれる。
妄想中にきまって響く、ポケタポケタポケタ・・・という擬音も楽しい。

船長、外科医、ガンマン、デザイナー、軍人・・・
妄想のなかでいろんなヒーローになるウォルター。
いかにも作りものめいたテクニカラーが、妄想によく映える!贅沢!
そしてベタベタな妄想内容にウォルターの甘ちゃんっぷりを見る。

周囲にとことんボンクラ扱いされる自分を、
大事にしてくれたのは、そして本当のヒーローにならせてくれたのは、
やっぱり妄想のなかのヴィーナスだった。

子どもじみた結末といったらそれまでだけど、なんとも夢があるじゃないですか。
これ、なんか物凄い寝不足のときに見たので少々ボンヤリしていて、
私もこれを見ているあいだずっと妄想に浸っていたような感じ・・・
ボンヤリしていたせいでストーリーの詳細とかきちんと記憶していないんだけど、
この作品のワクワクする滑稽さは妙に焼きついてる。


そしてもちろん、カーロフ氏の顔面も脳裏にくっきりと。
さすがおっかないですね、はは!
このわけわからんハゲかたももはや怖い。

最近グランドブダペストホテルのウィレムデフォー氏を見て確信に至ったのだけど、
やっぱりしわしわっとした怖い顔の俳優さんを見ると心が踊るね。
自分はどちらかというと平々凡々たるプレーンな顔立ちなので、
なんかすごい・・・これが顔なのか・・・!と思っちゃう。
スティーヴブシェミとかリーマーヴィンとかクリストファウォーケンとかさ、
居るだけで凄いもん。わーー、居る!!!ってなるもん。

カーロフさんはその見本みたいな存在で、ほんと、怖うま。
また声もすごい、心地よい低さ怖さにゾクゾク。耳元でなんか脅されたい。

各々の顔芸が光ってますね。(カーロフさんの眉毛すごっ)

各妄想に登場するヴァージニア・メイヨのコスプレも、
とんでもないナンセンスが猛襲する終盤も、ダニー・ケイ氏の虚勢も楽しい。


もう延滞するものか、という決意とともにここら辺でおしまい。

『復讐は俺に任せろ』

☆フリッツ・ラング監督/1953年/アメリカ

☆見るの・・・3回めくらい

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・先日『真人間』を見たらこの作品を思い出して


復習は俺に任せろ、そのかわり予習はお前がやれ。
・・・お受験映画の珍作!(全部嘘)

 

初めて見たときそうとうブッ飛んで、ラングの名前が私のなかに深く刻みこまれた。
何度見てもその素晴らしさは色褪せるどころか、見るたびに強烈な驚きと感動が!!!

もうグッとこないショットが無いほど大好きな映画で、どこから話していいのかもわかんない。
ともかく隙のないストーリーテリングとスピード感、主役級たちの顔の魅力、
個性的で忘れがたい脇役たち、シャープな画面、どこをとっても胸がアツくなる傑作。

主演は、グレンフォード。
妻を殺害されて復讐に邁進する元警官、という役どころが凄いハマってる。
その熱さと冷静さのバランスが。
ありあまるいい夫感、いいパパ感も、この作品に深みをもたらす。
(個人的にいってかなり理想の夫婦)

 

また驚くべきはグロリアグレアム。
ギャングマンの情婦、1週間のうち6日は買いものして、あとの1日は疲れて休む女。
鼻歌まじりに腰をふりながらお酒つくるところとか、サーカスのモノマネするところとか、
この人じゃなきゃ表現できない独特の幼さみたいなものが素晴らしい!!
ワザとらしくならずあんなことが出来るだなんて・・・
インテリジェンスを微塵も感じさせない、けどそこが良い!
バカっぽいけど不思議と情があってセクシーーーーで、ほんと、いい女。
少し眠たそうなドリーミーな眼つきと、ふくれたような頬&唇が、
成熟と未熟のあいだをいったりきたりする。
大好き!


そして、煮えたぎるコーヒーを顔にぶっかけられたあとの悲痛な美しさ。
美とグロテスクの表裏一体。
顔半分を包帯で覆った彼女にはある種のフリークス的な蠱惑も生まれて、
なんかしらないけどゾクゾクさせられる。


今回見直してびっくりしたのが、彼女が殺人をするシーンの素晴らしさ!
わけのわからない発言(ほんと不思議ちゃんの感じ)で相手を混乱に陥れ、
その隙に、これまでで最高の気分よ、とかいって眉ひとつ動かさず一撃。
身体じゅうの痺れがとまらないような流れでした。
こんな禍々しい女になっちゃって・・・
グレンフォードとのプラトニックな共犯関係には、涙が出そう。

また、リーマーヴィンに対する復讐シーンにも戦慄。
カメラがパッと切りかわるとコーヒーポットを片手にエラそうに立ってるあのショット!!!
思い出すだに鳥肌プチプチになりそう!

憎しみがぶつかりあうラスト一連のシーンは、臆面もなく完璧と言ってしまいたい。
顔半分を隠しながら死にゆくグロリアグレアムの哀しさも、
巨体をゆすぶってもがくリーマーヴィンの粗野っぷりも・・・

そうリーマーヴィンに言及してなかったわ。
まだけっこう若いころで、それなりにツルっとしてるけど、
やっぱり凄い顔だしほら穴から聞こえてくるみたいな声で、痺れる。
グロリアグレアムみたいな女をはべらせてるとこにも痺れる。


隅々まで大好きな、心の底から興奮する映画!!
いつか映画館で見られる日を楽しみに・・・


2014年6月9日月曜日

『ローマでアモーレ』

☆ウディ・アレン監督/2012年/アメリカ、イタリア、スペイン

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・準新作100円だったので、ジェシーくん見たさに


ちょうど1年くらい前にブンカムラで見て、楽しい気持ちになりました!!!


ウディ・アレン監督作品は『マッチポイント』以降は全て封切りで見ていて、
そのなかで私が好きなのは『タロットカード殺人事件』、『ミッドナイトインパリ』、
そしてこの『ローマでアモーレ』。

ウディ・アレン監督作品が好きです!!! ・・・という感じではないと最近思った。
『ブルージャスミン』を見て。
なんかあまりハマらない作品も一定数あるなぁと改めて感じた。
『ブルージャスミン』どうなんでしょうね。みなさんお好きなのかな。私はつらかった。
あとブンカムラでウディ・アレンやるのまじやめてほしい。
あのしゃらくさい雰囲気の客層になんか身の毛もよだつというか・・・
ジャスミンに対して嘲りしか感じてないみたいな笑い声が頻発しててそれもつらかった・・・
自分をかえりみることなんてあの人たちは一生しないんだろうね・・・
お金も時間もあまっている感じなので、せめてサービスデー(火曜日)に来ないで。
なんか私は自分でも驚くほど異様にブンカムラの客層をいやがるね!はは!

ウディ・アレン作品に話を戻すと、
『マンハッタン』なんかは去年見直したら最高にしびれて、愛してるし、
『カメレオンマン』『ギター弾きの恋』なんかは恥ずかしげもなく大好き!!!
バナナも好き!!!
ていうか『ギター弾きの恋』を15歳くらいのときに見て、
わーこんなおもしろい映画があるとは・・・と思って(そのころ全っ然映画見なかったけど)
大学1年生くらいまでは、ウディ・アレン監督最高!!!!!って思ってた。
そんでいろいろ見まくってゴッチャになって、いまやどの作品がどんなんだったか、
あまりおぼえてないや。

そんな複雑な想いをかかえてアモーレ。


これは私の大好きなジェシー・アイゼンバーグ氏がウディ・アレン作品に出演した、
記念碑的作品なんですよ。
すばらしきコラボレーション。
ていうかこれを見て、ジェシーくんに完全にどっぷりになったのかも・・・

ジェシーくんはウディ・アレンのことを尊敬してるらしいんですけど、
たしかに似てる。彼ら。
共通点:ニューヨーク生まれのユダヤ人、小柄、神経質そうに喋る、頭の回転が速い、
多才、男性、書きものをする、マジシャン役をやったことがある、etc.
で、ジェシーくんは本当に無理なく、アレン作品の画面におさまってるんですね!!!
ミッドナイトインパリのオーウェン・ウィルソンなんかは、
ちょっと無理してウディ・アレンのモノマネしてるような感じが漂ってたけど。
ジェシーくんは自然かつ魅力的。
そしてコメディがうまい!
エレン・ペイジのわけわからん話を聞いてるときの豆鉄砲ヅラときたら!!
あと歩き方も好きだし声もすき、髪質も好き。


なんだろうこれ、制作発表?愉快ですね。ジェシーくん素敵・・・


この作品はウディ・アレン自身も出てきて、なんかそれも私は嬉しい!!
やっぱり彼が出てくると楽しい、テンションあがっちゃう。
そして、この作品では、アレック・ボールドウィンもいい味。
ジェシーくんとエレン・ペイジのとこにデカい顔で出てきては、
あつかましく煽るような茶々をいれる、という最高に邪魔でおもしろい役。


助言をするわけでもなく、ただただ茶々いれて楽しんでる感じがおもしろい。

ということで、このジェシーくんのエピソードがダントツ好き~~。

ウディ・アレンのエピソードも、どことなく悲しげでいいですね。
シャワーのなかでしか活躍できない男が、バカバカしくも悲しい。

若夫婦のエピソードは、なんか最後がおもしろい。
クラシックのコメディを見てるようなドタバタな感じが好きです。
もっとやれ!と思っちゃう。アモーレ。

ロベルトベニーニのエピソードはなんか・・・蛇足な感じ。


しかしローマってほんとにこんなアモーレな街なのかな?
なら行ってみたい。
でもルビッチの『結婚哲学』では、たしか
「ウィーンは笑と軽いロマンスが約束された街である」
みたいな字幕が出てたのでウィーンもいいな!

2014年6月8日日曜日

『真人間』

☆フリッツ・ラング監督/1938年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・シブコレ100円のときに。ラング作品見たさに


久しぶりにジョージラフトの顔を見た!!
最初に彼を見たのは、『暗黒街の顔役』でコインを放ってるあれ。
雨に唄えばの元ネタこれか!!!というのが第一印象だな・・・
雨に唄えばありきの印象・・・


原題はYou and Me
真人間!かたくるしくておもしろいね。


ムショ帰りのジョージラフトは、デパートに勤めて、真人間へと更生の道まっしぐら。
そのデパートはオーナーの方針で、ムショ帰りの人をたくさん働かせて更生を手助けしてる。
周りの人には、ムショ帰りということは秘密にして。
ジョージラフト、同じデパートに勤めるシルヴィアシドニーとコッソリ恋愛中。
が、実はこの彼女には秘密があって・・・
かたや真人間になろうとしてるジョージラフトに魔の手が・・・というお話。


フリッツラング監督作品は10作見たか見てないかくらいで、
まだまだこれからといったところなんだけど、これはかなりの異色作では??
何するにもお金が必要ー♪みたいな、
よくわからないけど底抜けに明るい歌から映画が始まったのでビックリ!
めっちゃ韻ふんでて楽しい歌。
こんな愉快な歌がラング作品に登場するなんて・・・!
ジョージラフトはなんとなくギャングマン俳優、というイメージがあったので、
なんかもっとギャングっぽい映画を想像してたら・・・!油断した!

ハッピーな雰囲気やコメディタッチにしたいのが伝わってきた。
でもジョージラフトはこれを見た限りでは、あまりコメディ向きではない感じ。
照明のコードに足ひっかけてワタワタ・・・みたいなシーンがあるのだけど、
ジョージラフトって照明のコードに足ひっかけなさそう。
焦ってる姿が似合わない。焦り下手。(聞いたことない)

ラング作品、初めて見たのはスカーレットストリートで(激シブなスタートでしょ)、
復讐は俺に任せろを見てあまりのおもしろさにいかれた。
そうして見たのは仕組まれた罠、M、飾り窓の女、扉の陰の秘密、
暗黒街の弾痕、口紅殺人事件、無頼の谷このあたりでしょうか・・・
無頼の谷を除いてもうとにかくノワール、私のなかではラングといえばノワール。

ということで、このハッピー映画でもノワールがだだ漏れていた!!
シルヴィアシドニーとジョージラフトが軽くいちゃつきながら部屋に帰ってくシーンとかも、
なんか妙に影がクッキリしていて禍々しい!不吉。
感嘆してしまいました。ぬぐいきれぬノワールっぷりに。


でも、ロマンチックで楽しい場面も。
結婚したシドニー&ラフト、新婚旅行にいくんですね。
たくさんの国の旅行パンフレットを貰ってきたラフト、「どこに行く?」
シドニー、「まずは、イタリア!」かなんか言う。どこか忘れたけど。
そしてレストランで楽しくパスタとかを食べる。
要するにお金があまりないふたりは、新婚旅行の代わりに、
各国料理のレストランをハシゴするんですね。
ウィーンいったり中国いったり、お金あまりなくても至福。


あと、ふたりが勤めるデパートで、
エスカレーターの上からラフトが降り、シドニーが下からあがってきて、すれ違う、
その瞬間にふっ・・・とさりげなく手を合わせるショットなんかもあって、好き!!!


このシルヴィア・シドニーという女優さん、
おばあさんになってからビートルジュースやマーズアタック出てたんですねえ。
気づかなかった。

この作品ではなんか変わった女で・・・世話焼き女房というのか?
「犯罪をしても実入りがない」ということを、
黒板にいろんな費用計上とかをして説明するんですね・・・
逃走用のバイクにいくら、警備員を丸め込むのにいくら、
盗むのがこのくらいの額だから、一人頭に換算すると・・・とかいって。
なんたるリアリスティックな女・・・
そんな1ドル単位まで経費を計上するかね、という感じで・・・
顔も独特だし。

「どや?」


そうそうこの人の秘密というのは、実はこの人もムショ帰りなのね。
ジョージラフトには黙ってるけど。
何の悪さをしたのだろう?と考えて少しおもしろい気分に。
なんだろう?万引き?


超楽しいオープニングシーン覧ください。(PCから見れる)

2014年6月1日日曜日

『毒薬と老嬢』

☆フランク・キャプラ監督/1944年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・グラント氏見たさに


愛してるグラント様。

お相手は彼奴は顔役だっっ!!!のプリシラ・レーン。うらやましー。


舞台評論家のグラント氏、二人の伯母が住む家に立ち寄った際、ふとしたことで死体を発見。
どうやらこの伯母どもはいかれていて、
身よりのない老人を毒殺して天国に送ることを慈善と思って1ダースも人を殺してる。
こまるグラント氏、そこへ、グラント氏の兄(札付きのワル)も急に帰省してきて、
大混乱・・・という映画。

グラント氏の兄役にレイモンド・マッセイ、その子分役にピーター・ローレ。

レイモンド・マッセイのやってる役、オリジナルの舞台版では、
ボリス・カーロフさんがやっていたそうな!!!
レイモンド・マッセイは
「整形手術によりこんな顔になったが、カーロフ似を指摘されると激昂する」という役。
この映画、カーロフさんの素敵さに目覚めかけた矢先に見たので、びっっくり。
しかしカーロフ似を指摘されると怒るという設定は失礼。
ピーター・ローレはなんかいろんな役やりますね。


もうとにかくほとんど出ずっぱりのグラント氏が、駆けまわって喋りまくる映画。
すこし空回り気味で気の毒。
さりとて、彼にしかできないアクションそして顔芸としゃべくり芸はやっぱり見事。
彼の「突撃!」には笑っちゃったよ、はは。

こんなカメラ目線演出とかちょっとやりすぎですね。粋じゃない。
私はグラント氏が大好きだからうれしいけど。

なんたる顔。
彼はほんとにコメディが得意だし、
スマートでハンサムでスウィートでセクシーでチャーミングなジェントルマンだな・・・

このキスシーンもすごかった。
プリシラ・レーンを黙らせようと強引にキスしたグラント氏、
喋らせないために口を塞いだままだっこして戸外に急いで連れ出す。
人心地ついてプリシラ・レーンを解放しようとする段にはもう、
彼女のほうがキスに燃えてしまって、グラント氏を離さない。
という、グラント氏特有の。よっぽど素敵な人でないと成立しないパターンの。


ちょっといろいろ詰め込み過ぎでやかましくて、
ひとりで慌てるグラント氏がかわいそうになってしまった・・・
急も急に終わるし。
(え、それで丸くおさまったことになったの??!と混乱)
でもグラント氏ファンはひつけんですね。
なんかほんとに感心しちゃった。彼の芸達者ぶりに。

大好き~。

これ、『新婚道中記』かな。なんか・・・・・・なで肩だね。
ともあれ笑顔がソーナイスっす。

『恐怖の精神病院』

☆マーク・ロブソン監督/1946年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・準新作100円だったので、カーロフさん見たさに


『黒猫』を見ていらい、ボリス・カーロフさんのことが気になって仕方なくて・・・
 

それと先般読んだジェームズ・キャグニーの自伝に
「ボリス・カーロフ氏は役柄のイメージとは真逆で、本当に謙虚で慎み深い」
みたいな記述があった気がして、いま該当ページを探してたんですけど、
みつからないので気のせいかな?
でも謙虚なのは本当っぽい。なんとなく。


18世紀のイギリス。
精神病院を支配するシムズ(ボリス・カーロフ)は悪辣かつ残忍な冷血漢で、
患者に劇をさせて貴族たちに見せて笑いものにしたり(悪趣味)、
患者の身体じゅうに金箔を塗り固めて皮膚呼吸できなくして死に至らしめたり(謎)、
藁をしきつめた大きい部屋に大勢の患者を収容したり(不衛生)、
とにかく人を人として扱わない。
そんな惨状を変えるよう主張するネル(アンナ・リー)は逆にシムズらの策略により、
その精神病院に患者としていれられてしまう・・・というお話。


アンナ・リーはこんな様子で終始眼を見開いていて、なんかハトみたい。
(ハト+磯野きり子)わる2って感じ。
この人の演技あんまり好きじゃなかったな・・・他の出演作見てみないとわかんないけど・・・

カーロフさんはもう、どのショットをとっても凄い顔!
なんかこういう、しわしわっとした変な顔の人好きだわー。
というか私はたぶん、こういう「紳士っぽい悪者」がまんまと好きなんですよ。
あとカーロフさんのあの低い声もゾクゾクするし、イギリスなまりもたまんない。
軽くひどい目にあわされたい。
しかしまぁ彼の役柄、狡猾で残忍で悪趣味、演技うまい故に怖かった・・・

精神病院の描写には、ホラーめいた部分も。
檻や格子がつくる深い影、患者の奇声や奇行。
(あっでもパラパラマンガ描いてる人も居た。和んだ)


それでもグロ描写なんかは見せない上品さがありました。
製作のヴァル・リュートンって、キャットピープルとかレオパルドマンなんかと同じ人なのね。
たしかにあれらの映画も、恐ろしい「雰囲気」を、間接的にあらわしていた感じ。
まだ見てないけど『吸血鬼ボボラカ』もヴァル、かつカーロフさん出演!これ次借りよう。

あーでもこれ怖かった・・・
ここら辺も、過剰な演出は一切なくて、カーロフさんの絶叫やなんかもない。
ただ、ゆっくり眼をひらいたカーロフさんが自分の置かれた状況に気づくか気づかないか・・・
あたりでサッと場面が変わるんですね!!
かっこいい!

患者たちによるよくわかんない「裁判」、ラングの『M』みたいだった。
あんな場面なかったっけたしか。


カーロフさん、やっぱり気になる存在だなぁ。
調べたら『暗黒街の顔役』や『肉弾鬼中隊』にも出てたんですね。
そうとは知らず漫然と見ていたわ・・・!要見直し。

『恋の秋』

☆エリック・ロメール監督/1998年/フランス

☆見るの・・・3回め

☆見た場所・・・早稲田松竹

☆なぜ見たか・・・この映画が大好きすぎるので!


これはレンタルにないんですよね。おかしなことに。
それでもレンタルありますか?という問い合わせが多いからか、
シブツタのロメールコーナーには
「恋の秋のレンタルはありません!!!」みたいな紙が貼ってあるよね・・・


ロメール監督の作品が好きで好きで好きでもう大好きで、
映画館にかかると万難を排して駆けつけます。
どれもこれもべらぼうにおもしろい!

ロメールの映画を見るために劇場にむかってるときの心持たるや、
大好きなお友達に会いに向かってるときのウキウキ感、はやる気持ちの感じと同じだし、
見た後の充足感たるや、
大好きなお友達とハグ握手ハイタッチなんかしてるときの心境と同じ。

見た後、「ありがとう世界!!!」と叫びたくなりますね。
そこいら辺にいる人にむやみに握手を求めそうになる。

恋の秋も爆裂に好きで、毎回新鮮な感動と喜びが!!!

どうしてこんなに好きなんだろう。ロメール監督の作品が。
女性のうまれつきの(狙ってない、したたかではない)小狡さみたいなところを
びっくりするほどチャーミングに描いてくれて、ありがとう。

今回、併映の『冬物語』は残念ながら開映に間にあわず見られなかったんだけど、
同作品ヒロインのフェリシーがもう私は、ロメール作品のなかで一番くらいに大好きで。
習わずして博識、生来の哲学者。
彼女をめぐる男関係は見ようによってはドロドロ、
凡百の監督ならスキャンダラスに描いてしまいかねない。
けれどもロメール監督の視線はあくまで優しくて、素直。そう素直!!

『冬物語』を見たお友達(男性)が、
「あんな仕打ちをされたらフェリシーを殴りたくなる」とか言ってたけど、
ロメール監督は絶対に殴らないからね。
女の弱さも素直さも小狡さもちゃんと飲み込んでる。
どうしてこんな離れ業ができるのでしょう。
恋愛大国ってこういうことなのか(???)
女心がわかんないよ、という男性は、ロメール作品を研究するが吉。

ロメール監督作品の女性たちはみんな不完全で不安定。
でもそんな自分に嫌気がさして大人なのにポロポロ泣き出したりして、
なんかほんとに愛おしい。他人事とは思えない。

でも感情に寄り添うような演出は全然してなくて、
たとえば悲しい表情のクロースアップとかもなければ、
場面を盛り上げる劇的な音楽とかもない。
遠巻きにながめている感じ。
そのトーンがなんか全体に可笑しみを生んでいる。
ロングショットで見れば喜劇、ほんとそれ。

『恋の秋』は(やっとのことで本題)、中年女性マガリの恋物語。
女友達が、マガリの恋のために奔走する。
いいトシして色恋沙汰でうじうじ悩むなや!
とか誰もいわない。
いくつになっても恋するし、きっとみんなこんな感じなんでしょう。

ヒロインがふたりとも「超絶な美人」でないところもいいな~。
親しみやすい。


もう、ここら辺(↑)の一連のシーン、
あまりの幸せ&可愛らしさで涙が出てきましたよ。
生きててよかった、ありがとうロメールさん。
ちょっとしたすれ違いのあとに来る怒涛の多幸感を、
ワザとらしい感じもあざとさも全く無くほんとに素直に見せてくれる。

あとは自然描写。
これはほんとか知らないけど、秋はロメールがもっとも愛する季節、という噂があって・・・
それも納得の、木々のざわめき光のゆらめき、私はもう身震いしてしまう。

マガリがワイン生産者、という設定も素晴らしく効いていて、
「自然に共鳴する女心」を撮らせたら右に出る者無しのロメール監督ならでは、という感じ。


歴史ものは別として、ロメール監督が撮った作品の多くは、
「大事件」的なことが基本的に起らない。
(大事件的なことの例・・・殺人、不治の病、冤罪、列車強盗、牛泥棒、等)
恋する庶民たち、彼ら彼女らがあるきながら延々喋ってる様子を撮っている。
当事者にしてみたら「大事件」たる恋愛のあれやこれやを。