2013年9月26日木曜日

『素晴らしき休日』

☆ジョージ・キューカー監督/1938年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・グラント氏見たさに


ケイリー・グラント氏のアクロバットが見られる作品!明るくてロマンチック!

ケイリー・グラント氏は若くして両親を亡くし、働きづめだった。
彼は人生初めての休暇先で、よく知らない女性(ドリス・ノーラン)と恋に落ちて結婚することに。
帰国後、その女性の家を訪ねると、とんでもないお金持ちだった・・・という映画。

ノーランを愛しつつも、厳格な家に縛られたくないグラント氏は、
ノーランの姉、キャサリン・ヘプバーンと意気投合する。
彼女は聡明かつリベラルかつロマンチックかついい人(一緒にアクロバットしてくれる程)で、
ブルジョワ特有のいやらしさやしゃらくささ、おカタい感じとは無縁。

そして、ノーラン&ヘプバーンの弟役は、リュー・エアーズ。
一時期ジンジャー・ロジャースの旦那さんだった人ですね。
エアーズ氏も変わり者の好人物を演じてる!


豪邸で大きなパーティーがおこなわれているさなか、
パーティーになじめない面々(グラント、ヘプバーン、エアーズ、グラント氏の友達夫妻)は
ちいさな遊戯室で彼らなりの宴を催す。
歌ったり踊ったりアクロバットしたり・・・気取らない雰囲気が本当に楽しそう。
私もココに入れてほしい!!
決まり事や見栄なんかを逸脱して子どものようにハシャいでる。
ケイリー・グラント氏、夢見る好青年がとってもハマり役で、
キャサリン・ヘプバーンとの相性ももちろんぴったり。

本当ナイスカップルですよね。『赤ちゃん教育』大好き。

うれしくてとんぼ返りをするグラント氏、
キャサリン・ヘプバーンと目線が合って、抱擁・・・のラストシーンは、
一切の説明を排除しているのにすべてが伝わってくる演出と演技!

グラント氏とヘプバーンさんの魅力満載、楽しい映画です。

『東京暗黒街・竹の家』

☆サミュエル・フラー監督/1955年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


題名意味わかんないわ~~~。
国辱も国辱な映画です。
日本て言ったらフジヤマでしょーゲイシャでしょー。的な感性で作られてるよう。
もう終始フジヤマ。

主演のロバート・スタックはなんだか変なあばらやみたいのに住まわされます。
箪笥から布団セット一式を引っ張り出したり(枕は敷布団に縫い付けてある様子)、
寝起きする部屋のスミっこにぽつねんと小さな風呂釜が置いてあったり、
風呂につかりながら箸でベーコンエッグトーストをついばんだりしてましたよ。
パンを箸で食すなんてね(しかもin風呂釜)。
せまそーー。

それはもう、変な映画であることは確かだけど、
ハードボイルドで男らしい、力強い映画でもありました。

なんとなく終始のっぺりした印象のロバート・スタックに対し、
ロバート・ライアンのアクの強さ、雄々しさよ!
この人の存在だけで映画が成り立つ、と言ってしまいたい。
けどなぜかだんだん菅原文太チックに見えてくる。私だけかしら。

ダブルロバート(スタック&ライアン)の関係性にはそこはかとなくホモ臭がただよう。


私の狭隘さでは、日本の変な描写をすんなりとやり過ごせなくて、
そのせいでちょっとお話にハマりきれない部分がありました。未熟者!
変な描写に気をとられるうちにお話がドンドン進むので要注意。

サミュエル・フラー監督作品は、『裸のキッス』に度胆を抜かれ、
『ショック集団』にショックを受け、『鬼軍曹ザック』に心底感動し、
見るのはこれで四作目。

ラストの大立ち回りにはうれしくなっちゃいました。
映画とは戦場のようなものだ。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。ようするにエモーションだ!!!
ですよね、フラー監督!

ということで、素晴らしき国辱映画。(変な日本語!)

2013年9月24日火曜日

『不良少女モニカ』

☆イングマル・ベルイマン監督/1952年/スウェーデン

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ベルイマン監督に歩み寄りたくて


先日『夏の夜は三たび微笑む』を見たので、次はコレを。
孤独な青年ハリーは、モニカという少女と出会い恋に落ちる。やがて二人の間には子供が出来るが、モニカはハリーと子供を捨てて立ち去ってしまう。 という映画。

『夏の夜~』と同様、自由闊達な雰囲気に満ちてた。
超向こう見ずな少年少女のひと夏の恋。
エネルギーが暴走して、イタさも含めてつかの間輝く。

ふたりが過ごすストックホルムの夏の海が本当にきれい。
短い夏、一瞬の逃避行の、まさに一瞬のきらめきって感じ。

けれども、真面目なハリーと奔放なモニカは、
世間とのかかわり方において根底から大きな違いがある。
現実が立ちはだかるとモニカは逃げてしまう。
愛で人が変わるなんて欺瞞!
ベルイマン監督の視線は容赦なく冷徹ですね。

幼い子どもを抱えるハリーのやさしい顔とともに、この映画は終わる。
そのやさしさにせめて救われようではないか。(口語では使わない口調)


ベルイマン作品を見慣れてないせいか、少々かったるい感もあったのですが、
公開当時からしたら強烈な映画だったと思う。
モニカの美しい「肉体の映画」という点においても。

『自由の旗風』

☆ダグラス・サーク監督/1955年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


出た!またしてもロック・ハドソン!!

正直なところ私は同氏の魅力がよくわからず、
思うことといえば加山雄三に似てんなぁ・・・くらいのものです。
で、この作品、彼の役名が原題(CAPTAIN LIGHTFOOT)になってるところからもわかるとおり、
「ロック・ハドソンを楽しめ!」ってくらい出ずっぱりで、もう、ハドソンマックス。
おなかいっぱい~。

20世紀初頭のアイルランドにおける、地下組織の暗躍を描いた作品。
正直なところ私は、アイルランドの細かい歴史とか、イギリスとの関係性とか、
詳しいことはわかってないです。
麦の穂をゆらす風とかバリーリンドンが思い浮かぶくらい。
けど、スッキリと描ききるのが難しい題材なんだろうなぁ~ということくらいはわかります。

しかしこれはサーク作品。政治映画だけど、構造はメロドラマ。
ラストの幕切れの良さには舌を巻かざるを得ない!
難しい問題もキッスひとつで〆てしまう・・・

そして!衣装(特に女性陣の)とセットの華美さたるや!
コスチュームプレイとしての時代劇は、サーク監督にとって幸福な題材だと改めて思った!!

シネマスコープなので私のちっさいテレビで見るとかなりさびしい感じになるのだけど、
スクリーンで見たら圧巻だと思う。
アイルランド(オールロケ)の美しい風景が。
アイルランドに興味津々。ジョイスとか読んでみよっかな・・・


それにしても『自由の旗風』って、かっこいい邦題ですよね。
サークのキラキラパッケージシリーズは、全部邦題が素敵。

自由の旗風 (Captain Lightfoot)
悲しみは空の彼方に (Imitation of Life)
心のともしび (Magnificent Obsession)
天はすべて許したもう (All That Heaven Allows)
ぼくの彼女はどこ? (Has Anybody Seen My Gal)
愛する時と死する時 (A Time to Love and a Time to Die)
翼に賭ける命 (The Tarnished Angels)

・・・これで全部だっけ。
かっこいい~。

『天はすべて許し給う』

☆ダグラス・サーク監督/1955年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


ダグラス・サーク監督作品のなかで、初めて見たのがこれだった気がする。
主演はジェーン・ワイマンと、ロック・ハドソン。

冒頭、ゆる~~~く動くカメラが、アメリカ郊外に立ち並ぶ家や木々を美しくとらえると、
「ジョン・ウォーターズ作品みたい!!」と思っちゃう。
本当ならジョン・ウォーターズを見てダグラス・サークを想起するのが正式なんだろうけど、
私は、ダグラス・サークのほうをあとに知ったので。
(ここからもわかるとおり、本当にジョン・ウォーターズ監督作品のフォルムはしっかりしてる!)

ジョン・ウォーターズの作品と異なるのは、そのあとに展開する物語もどこまでも美しく、
メロメロのメロドラマであること。
メロドラマ、つまり、
周囲には反対される!
けど、障害が大きいほど燃える!
性描写はなし!
美しい音楽(メロディードラマ)!
こんな感じの映画。

描かれる内容がいかに通俗的であっても、サーク監督の演出は微塵も通俗的ではないのです。
ここが韓国ドラマとの違い。(韓国ドラマ見たことないくせに)

ヘタな演出でやられたら失笑してしまうようなシーンも、
あまりの美しさに落涙してしまうようなシーンに昇華する、サークの魔法。

ジェーン・ワイマンは未亡人の役。
娘と息子は大学に通うために家を出ていて、広い家に一人で暮らす。

ロック・ハドソンは、ジェーン・ワイマン宅の若い庭師。
スローライフの先駆けみたいな感じで、ロハスな暮らしを楽しんでる。
この作品でも加山雄三に見えてやまない。その上、髪型がすごく変だと思う。

この二人が歳の差カップルと相成って、結婚をしたがるものの、
近所の俗悪な連中からはスキャンダラスに噂され、不当な迫害に遭う。
ジェーン・ワイマンの子どもたちからは猛反対を受ける。
愛し合ってるのに・・・ という映画。

計算しつくされたテクニカラーが美しい。色彩豊かに展開される季節。
ロック・ハドソンが庭師、というのも良い設定ですね。
そして階段や鏡の使い方が的確でお見事なのは、サーク作品の常。

ジェーン・ワイマンの娘役にも興味深い設定が。
心理学を勉強し、何かにつけてフロイト理論を振りかざしてくる、っていう、
あんまり仲良くなれなさそうな女の子なのだけど、
いざ「母が年下の庭師と再婚?!」ってなると理論などどうにもならず、
もうオロオロと泣くのみ。
娘さん、メロドラマにフロイトはそぐわないのだよ。
恋に、理論もクソもないのだから!!!
書いててはずかしいわ~~。


トッド・ヘインズ監督によるリメイク作品『エデンより彼方に』も、私は好き!!
そっちもひさしぶりに見たくなりました。

『M★A★S★H マッシュ』

☆ロバート・アルトマン監督/1970年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・久しぶりにとっても見たくなったので


朝鮮戦争下の野戦病院が舞台の、超反骨映画!!!
左がドナルド・サザーランド、右がエリオット・グールド!!!
やっぱりべらぼうにおもしろい!!しびれるアナキズム!!!

戦闘シーンは出てこない。
野戦病院での手術シーンと、彼らの度を越した悪ふざけとを交互に描いてる。

お堅い感じの女性将校(サリー・ケラーマン)のベッドシーンを生中継したり、
彼女がシャワーしてる小屋を壊したり。
飲酒しまくるし、まるでモラルがなくて傍若無人に振舞う。ハチャメチャに。

リアルな手術と下品な悪ふざけとを交互に見ているうちに、
戦争の狂気が浮き彫りになってくる。
登場人物の誰も、戦争への憤りとか嘆きを口にしてはいないのに・・・。
「悪ふざけ」は、戦争の狂気に呑み込まれないための彼らなりのやり方に見えてくる。

メイキングを見たら、脚本を無視してアドリブばかりしていたようです。
みんなイキイキと振舞ってて、それぞれが個性的。
このあと『バード★シット』に主演することになるバッド・コート氏も、チョイ役で出てる。

特筆すべきはドナルド・サザーランド氏の素晴らしさ!!!!!
声がもう凶暴で、目つきも只者ではない感じ。色眼鏡がよく似合ってる。
他の映画でこの人を見た記憶があまりないのだけど、
この一本だけで、私のなかで相当好きな俳優さんというポジション。
とにかく声と目つきが素晴らしく最高!!
エリオット・グールドとの共犯な雰囲気も見ててぞくぞくする。

あとはホットリップスことサリー・ケラーマンね。
あんなに度重なる嫌がらせを受けてるのに、終盤のアメフトシーンで、
まったくメゲずに応援してる様子を見ると、バカなのかな?とまで思えてしまう・・・
あの表情は比類ないです。最高。

こまかいエピソードをまとめるのは、野戦病院内の「スピーカー」の存在。
このスピーカー、人格を持ってるみたい。
ラストのたたみかけなんて、ちょっと他に考えられないくらい、痛快。
大好きな大好きなラストシーン!!!

そしてスピーカーから度々流れるのは、日本語曲。
東京シューシャインボーイとかね。
(この曲、柳原さんのライブに行ったときに彼がうれしそうに歌ってた)

アルトマン監督のセンスすごすぎる。もっともっと見たい~~。

2013年9月20日金曜日

『見知らぬ乗客』

☆アルフレッド・ヒッチコック監督/1951年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・ヒッチ強化中につき


これは!!!
いままでに見たヒッチコック作品のなかでも、指折りのおもしろさ!!!

 

アマチュアのテニス選手ガイ・ヘインズは、浮気を繰り返す妻ミリアムと離婚したがっていた。そうすれば上院議員の娘であるアンと再婚できる。ある日、ガイは列車の中でブルーノという男性に出会う。ブルーノはガイがミリアムと別れたがっていることをなぜか知っており、彼の父親を殺してくれるなら自分がミリアムを殺そうと交換殺人を持ちかける。そうすればお互いに動機がないので、捕まる心配もないという訳だ。ガイはブルーノが冗談を言っていると思い、取り合わなかった。しかし、ブルーノは勝手にミリアムを殺してしまう。 という映画。(ウィキペディアより)


勝手に殺してしまう、って、インパクトある日本語~~。

ブルーノを演じているのは、ロバート・ウォーカー。
大人になりきれていないマザコンのサイコパスを、迫力満点に、気味悪く演じてる。
ねちっこい演技!

あの恐ろしい、テニスの試合シーン・・・
(みんながラリーを見て首を左右に振ってるのに、こいつだけ超まっすぐにガイを見つめてる)
そして、パパのベッドに寝ているシーン・・・
(電気がパッと点くとこいつがニヤニヤと横たわってる)
ヒッチ先生の比類なき演出とあいまって、私の鳥肌はもう炸裂寸前。

ちなみにロバート・ウォーカーは、この作品の撮影後、精神病院で死亡したとのことです・・・・・・


冒頭、ふたりの男の「足」だけを映し、それぞれが電車に乗り込み、出会うまでを一気に描く。
そこからはもう、ノンストップヒッチ!!!!!!
(ノンストップヒッチ:ヒッチ大先生の超絶技巧がのべつまくなしに展開される様子)

遊園地が重要な舞台になっているのも、すごいアイディアじゃないですか。
(ハイスミスの原作読んでないから、原作のアイディアかもだけど)
大人になることに失敗した主人公が、子供の遊び場である遊園地で、殺人を犯す。
そして最後にはメルヘンチックなメリーゴーラウンドで死闘を演じる・・・
皮肉。

小道具の使い方も拝み倒したいほど的確。教科書のよう。
ライターと眼鏡に、あんなにも戦慄させられる日がくるとは!!!

そして、ラストはうまいことオチていて、ほんの少しユーモラスな雰囲気に。
最後まで完璧ね。
もう、ヒッチ先生の魔法にかかりました。圧倒的!

2013年9月17日火曜日

『悲しみは空の彼方に』

☆ダグラス・サーク監督/1959年/アメリカ

☆見るの・・・3回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・シブツタ「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


大傑作。号泣して嗚咽してしゃくりあげてしまう映画。
原題はImitation of Life
理想化された現実、人生のイミテーション(模倣)。
劇化された虚構の現実。


女優を夢見るローラと、その娘スージー。
夫には先立たれている。

一方、黒人のアニーと、その娘サラジェーン。
白人の夫の行方は杳として知れない。サラジェーンは「見た目は白人」。

この二組の母娘が出会い、ともに暮らすようになり、
それから10年以上にわたるドラマを描いた作品。

舞台女優として成功したローラは、娘であるスージーと口論の際、
「そんな芝居はやめて。ここは舞台じゃないのよ」とか言われてしまう。
ストップアクティング、みたいな感じで(たぶん)。
芝居=偽り、ですからね。

サラジェーンは黒人でありながら白い肌をしている。
周囲には黒人であることを隠して、白人として生きようとしてる。
菩薩のような母アニーは「自分を恥じたり偽ったりすることは罪だ」と言い続けるけど、
サラジェーンはかたくなに反発する。


「イミテーション」というテーマを浮き彫りにするのが、「鏡」の存在。
特にサラジェーンに対して、鏡は容赦ない。
(ボーイフレンドに暴力をふるわれるシーンの残酷なやりきれなさたるや・・・)

そしてとうとうサラジェーンは家出、ダンサーになる。
心配して様子を見に行くアニー。
けれども、母娘だとわかると、周囲に黒人であることがバレてしまう。
アニーは娘を偽名で呼び、
サラジェーンはアニーのことを「ママ」と、どうしても声に出して呼ぶことができない。

当時の社会で黒人差別がどれほどのものであったのか、
こればっかりはいくらお勉強しても、根っこの部分がわからないというか、
わかった気になっては絶対にいけないことだと思う。
体感的には、本当にそこで暮らしてる人じゃないとわからないでしょう。
なので、サラジェーンがどうしてそこまで黒人とバレたくないのか、よくわからないけど、
娘のことを偽名で呼ばなくてはならない、
ママのことをママと呼べない、
この壮絶な悲しみはちょっと比類ない。
私はこのシーンを見て、今回も、しゃくりあげて泣いてしまいました。

サラジェーンに苦痛の概念を与えたのは社会の不条理さ。
そしてラスト、一見うまいこと哀しく&優しくまとまったように見えかねないけど、
不条理な社会は何にも変わっていない。
深い悲しみの余韻をまとったまま、物語は終わってしまう。

かわいそうなアニー。
この素晴らしい母親を見たら、誰もが、「もっと他人に優しくしよう」と思うでしょう。
私は思います。
泣き顔みたいな笑顔が忘れがたい。


悲しい物語を美しく謳いあげてしまう映画こそ、究極のイミテーションですね。
私はイミテーションにこんなにも魅せられてるんだー。
サークの魔法のような作劇術に。


最後にどうでもいいけど言及せずにいられないことをひとつ。
ダンサーになったサラジェーン、ダンスシーンが何度か出てくるのだけど、
どヘタもいいとこだ!!!
サラジェーンが踊るシーンは悪いけど笑っちゃうしモノマネしちゃうよ。
「先天的にリズム感がないとはこういうことなのか」って感じで。
あれは、ワザとヘタな人をキャスティングしたの??
気になるトコです。


ともあれ傑作。

『ぼくの彼女はどこ?』

☆ダグラス・サーク監督/1952年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・シブツタの「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので!


発掘良品、380円もするから、普段は手が出ません。
けど100円クーポンが配信されてきたので、ダッシュでシブツタ行った。
ダグラス・サークいっぱい借りれて幸せ~~~。

19か20歳くらいのときにダグラス・サーク監督の存在を知って、
数本見たなかでも、これは抜きんでて楽しい作品。
『キャリー』の恐ろしい母でおなじみのパイパー・ローリーさん、
こんなにも愛らしいお嬢さんでした!!!
共演はロック・ハドソン。この人、193センチもあるらしい。
サーク作品の常連だけど、なんとなく加山雄三を思わせるよね。


大富豪のフルトン氏(チャールズ・コバーン)は、
ある事情から、自分の財産をブレイスデル家(パイパーローリーの家)に贈りたいと考える。
彼は貧乏な画家に身をやつしてブレイスデル家の下宿人になることに成功、
とりあえず10万ドルを匿名で贈って、一家の様子を観察。 という映画。

10万ドルを手に入れると、ブレイスデル家の母親は、一気に成金街道。
趣味の悪い服を着て、いけすかない金持ち連中と付き合い、
下宿人を追い出し、変なフレンチプードルを2匹も飼い始める。
そしてパイパーローリーに、庶民であるロックハドソンと付き合うのは止せ、と言い出す始末。

大金が舞い込んだあとのこの母親の俗悪なる行動は、コミカルなおとぎ話風に語られるので、
終始お金にまつわるお話なのに、深刻になりすぎず楽しい作品。
パイパーローリーの妹役も、ナナメから事態を見守る感じで、おもしろいキャラクター設定。
この妹ちゃんとチャールズコバーン(子供&老人)が実にいいコンビ。
いいですね~チャールズコバーン。青春よふたたび、って感じで、ハシャいでる。

もちろん、テクニカラーの美しさ、色使いの大胆さも最高!
ミュージカルナンバーとともに心を浮き立たせてやまない!!!
若きジェームズ・ディーンが7秒くらい出てきて、妙な厚かましさを放ってるお宝映像もあり。

2013年9月15日日曜日

『パンチドランク・ラブ』

☆ポール・トーマス・アンダーソン監督/2002年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・PTA見直しブームで


4年か5年ぶりに見た。いいですね、好き!!!
これ、主演ふたりの「再会」シーン。
おしゃれなシルエットショットだなぁ。

アダム・サンドラー、好演。
繊細で情緒不安定で心優しい、たまにイカレちゃう寂しい男の役。
彼が終始着てる青色のスーツは、『バンド・ワゴン』でアステア様が着てた衣装をモチーフに
デザインされたそうですよ!!
(スーパーマーケットでタップを踏むシーンもある!!)

アダム・サンドラー氏は最後に、暴力の正しい使い道を発見する。
そしてこんなにもおっかない男を、恋の力で撃退する。
 
PTA組常連のフィリップシーモアホフマン!太ってる~!
彼はアダム・サンドラーのあまりに真っ直ぐな恋心にふれて、狂気すら感じて引き下がる。


「一生に一度の恋なんだ」なんて、大ミエ切って言われてみたい。
お互いに、どうして、どこに惹かれるのかなんて一切説明しない。
パンチドランク・ラブに理屈はないみたい。
アダム・サンドラーのキレ芸を受けるエミリー・ワトソンも妙にキュート。

ポップかつ美しい映像はミュージックビデオを見ているよう、
けれども、某ゴンドリーや某実花なんかとは一線を画する「映画的」なセンス!!!
いらいらするサンドラー、恋慕の情をつのらせるサンドラーを、的確にとらえてる。
PTAは何やらせても器用ですね!!

2013年9月13日金曜日

『青空に踊る』

☆エドワード・H・グリフィス監督/1943年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・アステア様見たさに


私の永遠のアイドルともいえる、アステア様主演映画。
相手役をつとめるのはジョーン・レスリーさん。
と言っても、デュエットは一曲のみ。

この映画、アステア様があんまり踊らないのでさびしかったです。
全尺89分しかないのに、30分経っても踊り始めないのでオロオロしちゃった。

そんななかでアステア様が、異色のダンスを披露するシーンが。
同僚にそそのかされて、テーブルの上に立って踊らされる「スネーク・ダンス」。
ユーチューブで見つからなかったー、残念。
こんなバカっぽい意味不明のダンスをするアステア様を見たことがなかったので、斬新!
これも御自身で振付をなさったのかしら?


1943年制作ということもあって、かなり戦時色が強い。
アステア様の役どころは、日本軍を撃墜して英雄として一時帰国、
10日間の休暇を貰った米空軍飛行士。
やっぱりアステア様はトップハットと燕尾服だよね、と思わされるほど、
パイロット服がサマになってない・・・

あと私はこの映画、日本語字幕で見たんだけど、字幕のフォントが変だった!!
なんていうの?教科書体?
今までいろんな映画を字幕で見てきたけど、こんなの初めてでした。超どうでもいいけど。


ストーカーのようにジョーン・レスリーにつきまとい、あまり踊らないアステア様、
自分でもストレスが溜まったのでしょうか。
終盤、すべてを炸裂させるかのようなダンスシーンが!
下の動画、PCからどーぞ!!!まばたき禁止!
やぶれかぶれでストレス発散、狂ったように舞うアステア様・・・
バーカウンターを滑りながら踊る、でも、滑り具合まで完璧にコントロールされてる。
なんて素敵なの。天才だ!
私のアイドル。ヒーロー。


この映画の終わり方は、ハッピーエンドとは言い切れない。
戦地へ向かうアステア様、「必ず帰ってきてね」とジョーン・レスリー。
涙をたたえたジョーン・レスリーがアップで映る。お美しい・・・

どアップにも耐えうる、可憐な美人です。

2013年9月10日火曜日

『青の稲妻』

☆ジャ・ジャンクー監督/2002年/中国、日本、韓国、フランス

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(地元ゲオレンタル)

☆なぜ見たか・・・初めて見たときの感動が忘れられなくて


ちょっと邦題ダサいけど、これ、大傑作です、
3年ぶりに見た~~。

たまに、映画に「よばれる」ような感覚があるんだけどコレがまさにそうだった。
この映画には「2008年の五輪開催地が北京に決定」っていうニュースが流れるシーンがあって、
そんな超みじかいシーンのことは忘れていたのに、
ちょうど東京開催が決まった日に、この作品を見たのでした。

そのニュースに触れたときの主人公ふたりの反応は、「無」。
彼らは始めから終わりまで、無表情を貫く。
変わりゆく中国に生きる若者たち、だけど、
この作品はことさら青春を肯定も否定もしていない。
けれども、ぶっきらぼうな痛ましさ、不器用なやりきれなさがにじみ出てくる。
そこにあるのは、刹那を生きる若者たちの「現実」であると、大いに錯覚してしまう。

この映画を傑作たらしめてるのは彼らのぶっきらぼうさと、
それを切り取るカメラの素晴らしさ!!!
のっけの移動撮影に心をうばわれない人は、もうこの映画を見ないほうがいい。

彼らは頻繁に、目的もなく(?)バイクでうろうろしている。
バイクや自転車というのはつくづく映画向きの乗り物ですね。
彼らが、どこからどこへかは分からないけど、ゆるゆるとバイクで移動するのを、
ずーっと見ていたい。

そして彼らは恋をする。
それはもう、果てしなく不器用に。
シャオジー(上の画像で左の人)のキスシーンの素晴らしさよ。
完璧なタイミング。(映画的に完璧という意味。男女的に完璧かはわからないです)

この映画、本当に本当に大好きだと確信しました。
2002年の中国作品なのに、なぜか、ヌーヴェルヴァーグ作品を思い出させる感じ・・・


日本公開時のポスターはこちら
「手をのばしても届かない未来
 それでも走り続ける」
年上のダンサーに恋をした
まだキスの仕方も知らない
不器用なココロが刻む青春模様


なんか安っぽいかつ暑苦しいポスター!
映画の印象をそこないまくり!!残念!

『スリーパー』

☆ウディ・アレン監督/1973年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ゲオレンタル)

☆なぜ見たか・・・まだ見てなかったので


パッケージに載ってる写真がすごい変で、
なんとなくクダらないんだろうな・・・と思って今まで見てなかった。
けど、クダらないのが怖くてウディ・アレンが見れるか!と思ってついに見ました。
結果、予想外におもしろかったー。よかった。

1973年に冷凍睡眠状態にさせられ、200年後の2173年に目覚めた男の物語。
「目覚めるなんて奇跡だ」という医者たちに対して
「奇跡?200年分の家賃が支払済みになってたら奇跡だ!」と切り返すウディ・アレン、
200年寝てたのにイキナリよくそんなおもしろいこと言えるよね!さすが!

けど台詞以上に、ウディ・アレンの身体を張った芸がおもしろい。
こんなによく動く人でしたっけ?ってくらい頑張ってる。
空を飛ぼうとしたり(上の画像)、家事ロボットに扮したり。
ウディ・アレン流アクションを堪能。
40年前の映画だけど、今でも全然笑えるこのアホらしさ!
時代に迎合したりウケ狙ったりをしないから、今見てもおもしろいんでしょうね。
そうそう、ダイアン・キートンも魅力的でした。
未来ファッション(?)がキマってる。

ダイアン・キートンとウディ・アレンの会話のなかで、
「信じているものはセックスと死だけ」という台詞がある。
そんな・・・そんなこと言わないでよって思うけど、誰が言い返せるでしょうか。
あまりに即物的な未来に、ウディ・アレンの死生観や諦念をかいま見たのでした。


2013年9月9日月曜日

『浜辺の女』

☆ジャン・ルノワール監督/1946年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ゲオレンタル)

☆なぜ見たか・・・ゲオにルノワールがあるなんて!と手に取った


本当に品薄です、地元ゲオ。
そのくせ、なぜかこまかいジャンル分けをしたがるから、
「ロードムービー」の欄とか10本くらいしか品揃えがないの。
80円レンタルは助かりますけどね!!!

そんな寂しい品揃えのなかに有った、おそらく唯一のルノワール作品。
アメリカで撮った70分強の短い作品です。

ヒロインはジョーン・ベネット。
ラングの『飾り窓の女』や『スカーレット・ストリート』等で、
忘れがたい魅力を放っていた彼女です。
 
哀しい宿命を背負った女の役。
主人公相手によくわからない幽霊話をするなど、奇行もめだつ。
陽・陰で言えば、完全に「陰」の美しさ。

そう、この映画、私が今までに見てきたルノワール作品に比して、
圧倒的に暗くてまがまがしい。
主人公のロバート・ライアン(戦争後遺症っぽい)が冒頭で見る悪夢なんて、
びっくりするほどグロテスク。
そしてしばしば主人公たちを襲う"水難"。
その水は冷たそうで、容赦なく激しくて荒々しい。
この映画には、官能のつむじ風は吹いていないみたい。

ルノワール監督の身に何か悲しいことでもあったのでしょうか・・・?
全員が「不信感」と「孤独」にさいなまれて、悲劇が起きてしまう。

終わり方も妙じゃないですか。
サッサとどこかへ歩き去るロバート・ライアン。
彼の行方はその後、杳として知れないのであった・・・って感じ。
なんだか怖い映画でした。

『夏の夜は三たび微笑む』

☆イングマール・ベルイマン監督/1955年/スウェーデン

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ベルイマンさんに歩み寄りたくて

男「これが人生だ。こんなにも素晴らしいものはない!」
女「夏の夜の三度目の微笑みよ!!!」 いい顔してるわあなた。


ベルイマン監督作品は、窮屈でかったるいとすら思った『秋のソナタ』しか見てなかった。
こういうタッチの作品も撮ってるのね~~。
なんていうか、自由闊達。
教えてくださったお知り合い(野本さん)に感謝!

私はスウェーデン人の友達もいないし訪れたこともないので、
文化とかよくわからないんですけど、
この映画を見る限りだとスウェーデン人の価値観がもう理解をこえちゃってる。
あんなにもあけっぴろげに愛人が存在していいの?
そんで、後妻と息子が駆け落ちしちゃったときの落ち込みようはあれくらいでいいの?
別にリアリズムを求めてるわけでは全然ないけど。
なんかスゴイ世界だな!とは思った。

演劇的な空間でもつれあう男女の情(もつれあう男女の情、とか書いててハズカシー!)
夫妻も愛人も息子も女中もすべての関係がシャッフルされる。
で、シャッフル後てきとうに組み合わせました、って感じに結実するそれぞれの関係。
失恋なんて、思い悩むほどのことでは全然ないよ、5秒後には新しい恋に走るんだよ。
恋愛というこのゲームを楽しみましょう。って感じ。
・・・うらやましい
私はスウェーデン語(?)を一言も解さないけれど、字幕にあらわれる台詞がとっても粋でした。
原語が解ったらさぞかし楽しいんだろうよね。

誰よりも自由に、奔放に躍動する女中ちゃんが、爽快かつ痛快な魅力を振りまいてた。
(一番上の画像で大口あけてる子です)
この人、ベルイマン監督の他の作品にも出てるみたい。

ウディ・アレンがベルイマンを崇拝する意味が、少しだけわかったような、
気がしないでもないでもないかな・・・という感じ。
まだまだよくわからない存在なので、もう少し見てみよう。ベルイマン。

『コンドル』

☆ハワード・ホークス監督/1939年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・グラント氏見たさに


ケイリー・グラント氏、見るたびに好きになっちゃう・・・
好きです。この世でカブってないけど。(グラント氏、1986年没)

これまではコメディでグラント氏の魅力を堪能することが多かったけれど、
この映画の彼はドタバタしない。
命知らずの空の男。飛行機野郎。男のロマンを体現してる。
原題もかっこいいじゃないですか。ONLY ANGELS HAVE WINGS
フランス語タイトルはSEULS LES ANGES ONT DES AILESです。

グラント氏は、郵便等を運ぶ航空会社の経営者。
仲間の殉職に際しても、ことさら悲嘆に暮れている様子は無い。
騒いで、飲んで、歌うことで、弔っている、かつ、平静を保っているみたい。
ジーン・アーサーがピアノを弾き、グラント氏が歌う!とっても楽しくてうれしい場面。

普段は経営者、だけれども、ここ一番の危険なフライトはグラント氏の担当。
なんてかっこいいの!!!
当然、女性たちの憧れの的で、
石を投げれば昔の女に当たる、らしいですよ。ひぇ~。

昔の女役代表、リタ・ヘイワース。
登場シーンから異彩を放ってる!これぞスターの品格!!
ジーン・アーサーさんがちょっとかわいそうなくらい。
けどリタ・ヘイワース、調べたらコレが出世作みたいね。
ふてぶてしいまでの色気を放ってるのに、当時21歳とかですよ。恐ろしい子。

そうこの映画、脇を固める各人が半端なく魅力的!
グラント氏の親友で共同経営者のキッドに、トーマス・ミッチェル。
かつてキッドの弟を見殺しにしてしまった飛行士で、リタ・ヘイワースの夫役に、リチャード・バーセルメス。
それぞれの空への憧れと恐怖、そして男気と友情。
死に際してまで誇り高い。


終盤では、涙を流すグラント氏(!!!)を見ることができます。
ああ、美しい涙!
どんなことがあっても、空への誇りは失わない。
女に頼み事はしない主義の彼が、ラスト、恋する女にどのように想いを伝えるか。
どうやって頼み事をするか・・・かっこよすぎてもう。ありがとう。ごちそうさま。
小道具の使い方として、完璧。

しかしまぁ、命知らずの男に恋をしてしまう女、というのも、切ないものですね。

『砂丘』

☆ミケランジェロ・アントニオーニ監督/1970年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・お友達(アサイー)にすすめられて


アントニオーニ監督作品は『欲望』を5年くらい前に見ただけです。
『欲望』はイギリス、コレはアメリカで撮った作品なのね。

アントニオーニ監督の眼に映るアメリカ像。
ベトナム戦争や冷戦の影、学生運動、機動隊、
開発が進んで豊かになっていく都心と、
変わらない時が流れている、すたれたようにも見える郊外。
大量生産大量消費。
どこまでが現実で、どこからが妄想なのか不分明で、クラクラしちゃう。


ひとつめのクライマックス・・・
偶然出会った若い男女が、砂丘でザリザリ愛し合う。

それはもう、無邪気に。
人外境で繰り広げられる、原始的な行為。
この瞬間には近代文明もクソもない。
しだいに、幻想のなか(?)では、複数の男女がザリザリたわむれている。
なんとなく神話の一部のようにも見える、
バックに流れる音楽とあいまって、変な美しさ。

登場人物(特に主人公ふたり)の振る舞いに、理屈とか意味とかをあまり感じない。
けれども映画全体として見たときに不思議な必然性があるように錯覚しちゃうのは、
なんなんでしょうね。アントニオーニ。


映画が最高潮に達するのは、やっぱりこのラストシーンでしょう。
消費され浪費されるはずのいろんなものが、爆発。
破滅の美学すら感じるこの場面・・・3Dで見てみたい。
ていうか3Dじゃなくてもいいから、映画館で見てみたい!!!

1970年、私はこの世に生まれてないし、
実際のところどういう感じなのかとかよく知らないけど、
時代の気分を感じた。
異邦人にこそ見える、感じる風景なのでしょうか。
イタリー人のアントニオーニ監督ならではの。
(イタリアのことイタリーっていう人かっこいい。ex.若尾文子さん)

あと完全なる蛇足だけど、
この映画に出てくるのはおそらく「砂丘」ではなく「砂漠」ですよ。
鳥取砂丘に行ったときに違いを調べたもん、詳しく覚えてないけど。


こういう映画は人からすすめられない限りあまり自ら手に取らないので、
本当にありがたいですね。映画をおすすめしてくれる人は。
遠くの蓮實さんより近くのお友達、とはよく言ったものですよ。(初耳ーー)
アントニオーニ監督作品、また借りてこよ。

蓮實さんで思い出したけど、「群像」の時評、欠かさず立ち読みしてます。
いま出てる『ポルトガル、ここに誕生す』評が傑作でした。
ポル誕、早く見たい見たい見たい!!


下の予告編動画(PCから見れる)で流れてる、
ピャーーーーーーーって感じの音楽がすごくかっこいいんですけど、
ピンクフロイドさん?かっこいいな!


2013年9月7日土曜日

『マグノリア』

☆ポール・トーマス・アンダーソン監督/1999年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・どんな感じだったっけと思って


7年くらい前に見て、薄ぼんやりとしか覚えてなかったです。
この映画は3時間あるけど全然、そんなに長く感じない。

新興宗教の教祖まがいのSEX伝道師や、今際の際にあるその父親、父親の後妻、看護師、子供のころクイズ王だったダメ男、今、天才と騒がれている少年など、一見、相互に無関係な10人以上の男女の24時間を描く群像劇。3時間を越える長編である。興行的には伸び悩んだが、後半のカエルのシーンが物議をかもし、伝説的なカルト映画として多くのファンがいる。
という映画。ウィキペディアより。


登場人物がたくさんいるけど、しっかりと整理されて描かれる。スッキリ。
常連のフィリップシーモアホフマンとかウィリアムHメイシーとかはさすがの安定感!
孤独とかさみしさ、切なさを演じきっている。
トムクルもぶっちぎれてる。フザけてるのかな、ってくらいに・・・。
天才少年もヤク中の女性も、みんないい演技ですね。ハマってる。


終盤まで、そこまで派手なドラマチックな演出はせず、
けっこう地味な出来事を重ねに重ねてドラマを作ってるんですね。
だからこそ全然飽きずに見られるし、ドンドン先が見たくなるのかも。

けっこう音楽がずーっと鳴っていて、ちょとうるさい感じ。
けどジェイソン・ロバーズ氏(コレが遺作となった)のシーンでは一気にテンションを落としてる。
けどジュリアン・ムーアが出てくるとまた画面のテンションが上がる。忙しい・・・


PTAさんの映画は、一番最初の『ハードエイト』というやつ以外は
『ザ・マスター』まで全部見たけど、なんか、いまだにどういう人かよくわかんないです。
人間の心理に関して相当深い洞察をしてる感じがする。
『ザ・マスター』に関してはもう、人知の及ばぬ領域に達したとすら思ったんだけど、
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は、主人公を悪の権化みたいな描き方をしてるわりに、
ダニエルデイルイスがそこまで悪い人にはどうしても見えなくて、
力作だなぁくらいにしか思わなかったような気がする。


『ザ・マスター』やこの作品は、「頑張れば報われるよ」みたいな安易な感じではなくて、
「なんだかよくわかんないことがイロイロ起ってその中には希望もあると思うよ」みたいな、
何か悟りを開いた老人みたいなトコがあると思う。
この作品撮ったとき、PTA氏まだ30にもなってないんですけど・・・何者?
『ハードエイト』次にツタヤ行ったら借りようっと。

愛への恐れとか渇望とか、過去にとらわれざるを得ない人間の宿命とかを、
いろんなエピソードを用いて描いてる。
どうしようもない感じに陥っていく人々に、平等に、前代未聞のカタストロフが訪れる。
笑えないのに可笑しい・・・
このカエルたちに哲学的な意味を見出そうとする人とは、
ちょっとお友達にはなりたくないよねって感じです。

PTA氏は1970年生まれ、まだまだ映画作家としてお若いですね。
これからどんな映画を撮っていくのか、もう、非常に楽しみ。
ウィキペディア見たら最新作(2014年公開?)は"Inherent Vice"ですって。
どんなんだろう~~。


『免許がない!』

☆明石知幸監督/1994年/日本

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・教習所に通い始めたので!私も免許がないので


それにつけても、ツタヤの100円レンタルというのは本当にありがたくて最高。
こういうどうでもいい作品をひょいっと借りられるから。
380円とかだったら、見る映画の幅がドンドン狭まるかもしれないですね。

この映画はつまらないけど、見た感想としては、
スシ王子とかを20年後くらいに見たらこういうことになるんだろうなぁ~ということ。
スベリまくってるよ、っていう。
一応コメディらしいけど微塵も笑うところはないよ、そういう映画です!

主演が舘ひろしさん、という事実が唯一の救い。
いい俳優さんだとは思わないけど、見ためが好きだから。
ひろしがボディコンギャルたちと野球拳したり、
納豆のパックをあけたり、という、稀有な楽しさはありました。

何気なく舘ひろしさんのウィキペディアを見たら、
小学生時代は鈍臭かったため、当時は「どんくさ舘」と呼ばれていた。
って書いてあった~~語呂悪いわ。
私が撮りました、って感じの画像みっけ。


で、私は教習所に通い始めたんですけど、
まだ3回しか乗ってないしもう難しすぎて大変です。
普通にそこらへん運転してる人がみんな天才に見えてきた。
私こそどんくさいよ、まったく。ハンコ押してくれ!って感じ。(下の動画参照)
舘ひろしさんのように頑張って免許取ろう~。


『三十九夜』

☆アルフレッド・ヒッチコック監督/1935年/イギリス

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅

☆なぜ見たか・・・お友達(アサイー)がDVD貸してくれた


ヒッチコック監督、イギリス時代の、90分ないくらいの短い作品。

うーん。今回のカメオ出演は気づかなかった!残念・・・
ウィキペディアで調べたら
ロバート・ドーナットとルチー・マンハイムが劇場から逃げ出した際、そのかたわらでごみを投げ捨てる。
ですって。ウソー。居ました?


ある劇場から物語は始まる。
驚異の記憶力を持つ男のパフォーマンス。
これ、本筋と関係ないお遊びかと思いきや、重要なフリになってるのですね。
まったく無駄がないストーリーテリング。

主人公ハネイ(ロバート・ドーナット)は謎の女によって、
謎の事件に巻き込まれる。
殺人の容疑者となって警察から追われ、謎の組織にも追われる。
逃げるハネイ! という映画。

次から次へといろんな人が登場して、ハネイを助けたり、ピンチに陥れたりする。
国際機密が絡む物語で、基本的にはハラハラの連続なのだけど、
たまにおせっかいなオジさんやオバさんがあらわれて、楽しげなトーンになる。
もちろん金髪美女とのロマンスもあり、短尺なのにもりだくさん。

今回のヒロインは、マデリーン・キャロルさん。
知的な美女ですね!
ドーナット氏と手錠でつながれるシーン、ふたりの息の合った演技が素敵。
よく知らない人と手錠でつながれるって怖い・・・宿で一夜を共にするし・・・
これがヒッチコックの映画で、美男美女だからいいようなものの・・・
想像すると本気で怖いです・・・

気をとりなおして、
映像的におもしろいところもたくさん。
殺害現場を見つけた掃除係の女性が悲鳴をあげるシーンで、
叫び声の替わりに汽車の汽笛を重ねて、疾走する汽車にパンする。
そんで車内のドーナット氏の様子へと場面を移行。
カッコよすぎる場面転換。ヒッチ大先生すごい!


ヒッチコック入門編としても自信をもって人におすすめできると思った!

2013年9月4日水曜日

『ションベン・ライダー』

☆相米慎二監督/1983年/日本

☆見るの・・・8、9回めくらい

☆見た場所・・・自宅(DVD持ってる)

☆なぜ見たか・・・毎夏見たくなる

「一番好きな映画は何」って訊かれたら、だいたいコレを回答してる。
そのくらい、大切な映画!
初めて見たのは5年前の今頃、早稲田松竹の特集上映で、
『セーラー服と機関銃』との二本立て。

初めて見たときはラストシーンでとんでもなく号泣して、
終映後もフラついちゃうくらい爆裂に感動した。
初見が映画館だった、というのは、たいへんラッキーだったなぁ。
この映画は特にロングショットが多いし。


いつもガキ大将のデブナガにいじめられている、ジョジョ、辞書、ブルースの3人の中学生。デブナガに仕返しをしようとしていた矢先、3人の目の前でデブナガが暴力団風の男たちに誘拐されてしまう。デブナガを救出しようとする3人は、誘拐事件を起こした組員、山と政を連れ戻すように組から命じられていた中年のヤクザの厳兵と出会う。3人は厳兵に、一緒にデブナガを救出しようと持ちかける。(ウィキペディアより)


左から辞書、ブルース、ジョジョ。
辞書:坂上忍さん。ブスは家から出るなとか言ってる現在からは、程遠い感じ。
ブルース:河合美智子さん。声が良い。
ジョジョ:永瀬正敏さん。大好き!


こんなにも繰り返し、この映画を見てるのに、
私が言葉で説明できる魅力なんてたかが知れてるわ。
言葉でスッキリ説明できる類のものではない。
その上、この作品はストーリーがかなり端折って語られるので、
「わけわかんないからつまんない」とか言う人いっぱい居そう。

けど、そういうことではないのだよと声を大にして言いたい!
画面狭しと彼らが走り回って、傷だらけになってもがむしゃらに、
支離滅裂に、あらゆる意味を排して走り回って、追いつめられて、
大人にならざるを得ない、成長せざるを得ない、
けど言葉にできない感情をどう爆発させていいのかわかんない、
その姿を見てグッときてしまう。
クソッタレな感じの大人になってもこの感動を忘れずにいたいよ。

のっけの7分以上にわたる長回しも凄いけど、そんなこと言ったら、
凄くないショットがこの映画に無いです。
けど溝口さんのような流麗な長回しではなく、
動き回る少年少女の躍動にカメラ側が合わせてるみたいな、予測不能の長回し。
ある意味ドキュメンタリーみたい。

そして、相米映画の少年少女は、脈絡なく歌う。
大量の水にうたれながら近藤マッチの「ふられてBANZAI」を
声を張り上げて歌い踊るラストシーン・・・嗚咽。
この歌そのものにはメッセージ性皆無なのに。
途中でアラレ先生と歌う「雨降りお月さん」も大好き。
別の作品だけど、『台風クラブ』の冒頭でみんなが踊る「暗闇でDANCE」も大好き。

永瀬さんは、自転車からトラックに飛び乗るシーンで死にかけたらしいんですけど、
本当に過酷そうな場面が多いなぁ~と思う。キャストもスタッフも。
その、どんづまりみたいな部分で、思いもよらないものがカメラに映るのでしょうね。


あと、「男女混合三人組」の映画っていいですよね。
ストレンジャーザンパラダイス
カリフォルニアドールズ
はなればなれに
女は女である
冒険者たち
生活の設計
・・・わーこれしか思いつかない。けどいずれおとらぬ傑作~。
男性だけの三人で言えばダウンバイローとか、サボテンブラザーズとかさ、
マルクス兄弟も三人ですね。
なんか絶妙なバランスが成り立ったり崩れたりして、おもしろいと思う。


もっといろいろこの映画について語りたいことはある、というか、
この映画を愛する人と4時間くらいかけて語りたい!
ブルースが随所に見せる気遣いがいいよね、とか、
出演時間は2分くらいだけど倍賞美津子さんめっちゃいいよね、とか、
あの字幕のダサい感じがまたいいんだよね、
みたいな話をしたいです。
本当大好きな映画。一番大好き。


2013年9月3日火曜日

『シェイディー・グローヴ』

☆青山真治監督/1999年/日本

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・青山監督にイカレ中なので!


え、、、

唖然とした・・・なんだこの変な映画は!
え、何でこうなったの!えーっ! って感じの映画です。


主演は、粟田麗さん。恋人にふられて、傷心。
もうひとり、井浦新さん(当時はARATAさん)。会社でうまくいかず、傷心。
このふたりの不思議な出会いを描いている作品。

まず、謎のナレーションが私を戸惑わせたのでした。
滑舌が良いとは言えない男性の声で、クサい感じのナレーション。
中盤、それが光石研さんによるものだと判るのだけど、白々しさが残る。

そして何より粟田さんの言動がまじで品性を欠いていて馬鹿みたいで、
薄っぺらくて意味不明。
ルックスは素敵なのに、生理的に嫌悪してしまう。
簡単にいうとストーカー行為とか、まぁ他にもイロイロあるんだけど。
あと「彼氏に嫌われない方法」的な、ハウツーみたいな本を読む人、
私はすべからく嫌いなので!

そんな意味不明の女にウッカリ恋しちゃうアラタさん。
ちょっと、しっかりしてくださいよって感じ。
本当に優しそうだし、珍しく、歌うアラタさんも見られたので、
そこは良かったですけどね!
けど、粟田さんに別れを告げにいくとき、一見花束に見えてその実、
花ではなく草のみ・・・という珍奇なプレゼントをしたり、
ひとりでえんえんと喋り続けたり、と、この人の言動もかなり奇矯。


粟田さんにはいちいち嫌悪感しか覚えないし、
光石研さんのクサいナレーションはどうかしているとすら思うけれど、
田村正毅さんによる撮影だけは的確で美しくて・・・
フォルムは一切破綻していないのに、登場人物が不思議ちゃん過ぎる・・・

けど、斉藤陽一郎さんがまたイイ感じで出てきて、
私はとってもうれしかったです。
秋彦くんではなく「宗近」という役名で。
また人の良さそうな若者でね、この人だけは、いいなと思える。


粟田さんが恋をするオノさん(関口知宏)もどうしようもない男で、
ペッペッ!って感じ!
みんな迷惑だ!!斉藤陽一郎さん以外ね!

こんなにもダメで馬鹿な女がいますよ、ということを描いた映画なの??
なんなのかな?????
解せないよ、青山監督!


『ファミリー・プロット』

☆アルフレッド・ヒッチコック監督/1976年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ヒッチ強化中につき


ヒッチコック大先生の遺作となった作品。
とっても!おもしろーい!!

そう遺作。最後のカメオ出演はシルエット。
すごいね。コレでわかっちゃうんだから。


のっけからバーバラ・ハリスがインチキ霊媒をしていて、苦笑。
なかなか変な女を、小狡く、ユーモアたっぷりに演じてた。
バーバラさんとブルース・ダーンがカップル設定なのだけど、
このふたりが乗る車が細工を施されて故障、暴走するシーンがある。
運転するダーン氏焦る!助手席のバーバラさんは騒ぎまくる!
このシーンでのバーバラさんのウザさとダメさと邪魔さ、半端なし!!
真剣みを削ぐダメっぷり。潔い。

で、車は横転。ふたりはなんとか助かり、車から脱出するのだけど。
ダーン氏の顔を踏み台にするバーバラさん。
ダーン氏はこんな顔芸を披露することに・・・!上に見切れてるのはバーバラの靴。
やったね、サービス精神旺盛だねダーン氏。好きになっちゃった。
ケイリー・グラント氏のようなスマートな魅力ではないけれどね!
(そうそうこの人、ローラ・ダーンのパパとのことです)


バーバラさんとダーン氏の小悪党っぽい、ちまっとしたふたり組が、
素人捜査を進めていくのがこの映画のメインプロット。
行き詰ったかと思うと新たなヒントを手にして前進、
テンポよく物語が展開する演出の手腕は職人芸!お見事!

この御二方に対抗するのは、カレン・ブラックとウィリアム・ディヴェインのカップル。
こちらはふたりともとっても濃い顔立ちで、胡散臭さもゴージャスさもぷんぷん。
小悪党ではなくて大悪党!
このあたりの描き分けもおもしろいよなぁ。

ラストもうまくオチがついてて、楽しい。
年齢不詳ですねバーバラ・ハリスさん。
インチキ霊媒師で、ワガママで強欲なのに、何かがかわいらしい、不思議な役。
霊媒シーン(特に2回め)とか、「寝たフリ」シーンとか、
この人にしかできないウザさがありますね!ええ、ホメてます!


この作品、お友達(アサイー)に執拗にすすめられてて、やっと見たよ。
見てよかった~!

サスペンスもユーモアもサービス精神満点のヒッチコック大先生、
遺作まで、楽しい映画をありがとう。お疲れさまです。
これからもドンドンいっぱい見よう~

『火事だよ!カワイ子ちゃん』

☆ミロス・フォアマン監督/1967年/チェコスロヴァキア、イタリア

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・数年前に『ブロンドの恋』見ておもしろかったことを思い出した、
 あと、邦題も良いなぁと思って


火事だよ!カワイ子ちゃん。
と言いつつ、カワイ子ちゃんではなく消防署のオジさんたちが主役。


ミロス・フォアマン監督の作品は『ブロンドの恋』とコレしか見たことないのだけど、
『パパ/ずれてるゥ!』ってやつを見てみたいです。
ずれてるゥ!シブツタにあるのかな??あるかなァ!


消防署主催のダンスパーティー。
そこで、ミスコンを開催することに。消防隊員たちは候補者選びに夢中。
ダンスパーティーで行うくじ引きの賞品が盗難されたり、
パーティー中に近所で火事が発生したり、ドタバタ忙しい。っていう映画。

72分と短い尺のなかでいろんな事件が起きるので、バタバタするのだけれど、
どこかのんびりとしたトーンで、すっとぼけているような感じ。
緊張感を欠いた独特のゆるいトーン。
まぁお茶でも飲みながら見ましょうや・・・くらいのゆるさ。

そして、カワイ子ちゃんとは言いかねる女性もけっこう出てきますね。失礼。

ミスコンの候補者が小部屋に集結すると、
オジさんたちのテンションがぶっちぎれる。
トホホ・・・って感じで笑えます。
で、ミスコン本番。候補者たちが急に恥ずかしくなったのか、おむずかる。
舞台にのぼることを拒否する候補者たちVS男性陣、で、大乱闘に発展!
混乱をきわめるなか、登壇して、勝者の証である王冠をかぶり、
ニコニコと手を振るのは、太った中年女性。
このへんの感覚(おむずかるあたりとか、太った中年女性というオチとか)は、
ちょっと日本人に似てる感じで、おもしろい~。


この映画、党幹部批判ということで、一週間で上映中止になっちゃったみたい。
当時の社会情勢など、詳しくは残念ながらよくわかりませんが・・・。
アナーキーなことをアナーキーに描くのではなく、
キュートにおちょくってるような感じなのでしょうか。

どこまで真剣にやってるのかよくわからないくらい、みんな終始すっとぼけてる。
そしてとってもおしゃれ。
あと、チェコ語は本当に一言たりともわからないけど、
チェコ語の響きがなんとなくかわいらしくて好き~~。

チェコの映画ってあんまり見る機会ないけど、
カレル・ゼマン監督とか大好きなので、興味のある国です。
機会があれば行ってみたい。


(下の動画見れる人へ)
よく知らない青年が、この作品について解説してる映像、みたいな感じ。
誰かは知りません・・・

2013年9月1日日曜日

『Helpless』

☆青山真治監督/1996年/日本

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・ユリイカ、サッドヴァケイションを先日見たので


やっと見ました!
青山監督の劇場用映画デビュー作にして、浅野忠信氏の初主演作。

とても80分しかないとは思えない濃度の映画。

冒頭の空撮から私たちを魅了するカメラは、やっぱり田村正毅さんによるもの。
青山監督のいろんな作品を任されてるばかりか、
私の最愛映画『ションベン・ライダー』の撮影もこの御方なんですよね。
ありがとう田村さん。
(青山監督の最新作『共喰い』の撮影は他の人らしいです)


最近立て続けに青山監督作品を見て、感じたのは、
登場人物の個性と魅力がとっても力強い。
それぞれが「使命」をもって登場しているような感じ。神話のように。
たとえばこの映画では陰惨極まりない事件を描いていながらも、
安男(光石研さん)や健次(浅野さん)を人非人みたいには映さない。
また、安男の妹・ユリ(辻香緒里さん)が素晴らしいですね。
知的障害のある役なのだけど、すべてを超越してるような感じがある。
何ものにもとらわれず、小難しく考えたり、拘ったりすることがない。
過去に縛られる安男や父の死にとらわれる健次の眼に、
彼女はまぶしいと思う。

あと、やっぱり斉藤陽一郎さん!秋彦くん!
健次の同級生の役で、言動が多少奇矯。
ねじくれていて空気が読めない感じなのだけど、人が良さそう。
っていう、不思議な人物形成は、
『サッドヴァケイション』でも変わっていなかったですね。
三部作見て、斉藤さんの魅力に参りました。
斉藤陽一郎さん、1970年11月9日うまれです。
(おてもと編集長の猪俣氏と同じ誕生日)
よろしくお願いします。


主演の浅野さんは、ただでさえ老け顔なのに当時23歳くらいなので、
高校生という感じはしない・・・
この人は何が魅力的なのか、あまりよくわからないけど、
なんだか文句を言えないような雰囲気はありますね!
あと、歳をとってからのほうが素敵ですね!

というわけで北九州三部作は見終えたけど(3→2→3→1という異例の順番で)、
まだまだ青山監督の映画、たくさん見たいなぁ~~~。
『共喰い』もいよいよ来週公開!楽しみだ!!!
『共喰い』公式サイトはこちらです!!!

『マンハッタン』

☆ウディ・アレン監督/1979年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅

☆なぜ見たか・・・お友達(アサイー)がDVD貸してくれた


初めて見たのは高校3年くらいだと思うので、7年ぶり?
高3~大1にかけてウディ・アレン作品を集中的に見たので、
かなりゴッチャになって、記憶がダダになっています。

『マンハッタン』は異色作だから薄ぼんやりとは覚えていたけど、
わ~~おもしろかった!ひさしぶりに見てよかった~。

ニューヨークには一度も行ったことないけど、私は完全な都会派で、
自分のなかの「都会観」みたいなものは実にウディ・アレン氏と似てる、
というより、たくさん影響を受けてるのだと思う。
ウディ・アレン監督、都会を礼賛しつつも複雑な想いで屈折している感じ、
とっても大好きです。
そのうち東京で作品撮らないかな。
東京でアモーレ。(ダサっ)


冒頭の数秒で引き込まれる。
完ぺきな音楽とモノクロのショット!おしゃれ~。
ウディ・アレン氏によるモノローグも痺れる。暗唱したいくらい。
けどちょっとこの映画は全体的にキマりすぎで、
かっこよすぎるよ、って感じがしなくもないのだけど。
そんななかウディ・アレンの自虐的なしゃべくりが、雰囲気を中和させてる。
元妻に暴露本を出されるくだりとか、さすが!

ダイアン・キートンとプラネタリウムでデートするところ、
素晴らしいライティングに感動。
ベルイマンもびっくりって感じで。

そういえばウディ・アレンのベルイマン崇拝は有名だし、
この作品中でも言及されていたけど、私は『秋のソナタ』しか見たことないっす。
そんで秋ソナあんまりおもしろいと思わなかった!
けど、ウディ・アレンがそんなに言うなら、今度他の見てみようっと~
何から見ればいいのやら~~。


あと、大好きなのは、テープレコーダーにむかって、
自分の生きがいとは何かを吹き込むシーン。
グルーチョ・マルクス、ジュピターの第二楽章、感情教育、マーロン・ブランド、・・・
そしていつの間にかトレーシーへの美しいラブレターになってる。

このあと、トレーシーの元へ走ってくウディ・アレン氏は、
ちょっとやばいですね。恥ずかしくて見てらんない。
さすが、現役恋するおじいちゃん。


20歳くらいまではウディ・アレンが大好きだったのだけど、
疎遠になり、ついにはバルセロナを見て雲行きが怪しいな~と思ってしまった。
けどやっぱ好き!おもしろいし、台詞が美しくておもしろくて好き。