2013年12月22日日曜日

『秋刀魚の味』

☆小津安二郎監督/1962年/日本

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・神保町シアター

☆なぜ見たか・・・せっかくスクリーンで見られる機会に見ようと思って


小津監督の作品は18歳のときに2本くらい見たっきりで、
当時の私には地味!!という印象が強かった。
別に退屈はしないし、『東京物語』における原節子のモノマネとかしてたけど。
でも、増村さんとか川島さんとか、
もっとテンポよく見られる映画のほうがどうしても面白く感じて。
それでか7年も見ずにいたのです。

で、秋刀魚の味。
言葉もないわ。

寂しくものんびりと酔っぱらう笠智衆さん。
その背中、もうお茶を入れてくれる人がいなくなってしまった彼の、その背中を見て、
私はもう滂沱の涙。心が震えに震えた。
なんなの、笠智衆。
誠実、飄逸、ユーモラス。
涙は見せずに背中で語る。



あの不思議な会話(ありますよ、いやーないですよ、いやあるよ、ないよ、あるよ・・・が永劫続く)、
10代のころは違和感すら有ったあの会話のリズムも、なんだか心地よいタメに感じられた。

脇を固める面々も活気にあふれて魅力的。
笠智衆の飲み仲間ね。
ほどよくゲスくてほどよくダメで、人生はロクでもない、かつ素敵、と思わせてくれる。
バーのマダム、岸田今日子もハマり役。すばらしい!
何より、笠智衆の娘役、岩下志麻さんよ。
輝くばかりの美しさ。



編集の面では、小津慣れしていない私にとっては、その唐突さにビックリするばかり。
カットが切り返ったと思いきや予想外の場所に人が立ってたりして、
うまくいえないけどエッ!!て感じで(うまくいえないにも程がある)、とにかく「唐突」という印象。
カットレベルの話でなくとも、
あんだけズルズル、結婚するのしないのするのしないの誰とするの彼とするの言ってたくせに、
結婚式シーンとかは皆無って!という驚きもありました。
捌き方がすごい、斬新過ぎる。
そうかと思うとカラショットの連続で泣かせてきたり。

苦みとうまみいっぱいの人生、本当しょうもないけど、肯定して生きたい。
驚嘆すべき作品に出会えました。ありがとう小津さん。
これが遺作というのがまた、なんとも。


2013年の暮れに、小津さんにノックアウトくらうとはね!!!
作品ほぼ見てないので、これから楽しみいっぱい。えへへ。

2013年12月19日木曜日

2013年に見た映画の振り返り

2013年も残すところあとわずか。
今年見た忘れがたい映画の数々をピックアップしてみましょう。

ランキングとかは出来ないので、順不同。

【今年公開の作品から10本】
☆ムーンライズ・キングダム(ウェス・アンダーソン/2012/アメリカ)
☆ザ・マスター(ポール・トーマス・アンダーソン/2012/アメリカ)
☆ホーリー・モーターズ(レオス・カラックス/2012/フランス、ドイツ)
☆ローマでアモーレ(ウディ・アレン/2012/アメリカ、スペイン、イタリア)
☆ポルトガル、ここに誕生す(オムニバス映画/2012/ポルトガル)
☆ラヴ・イズ・パーフェクト・クライム(アルノー&ジャン=マリー・ラリユー/2013/フランス)
☆眠れる美女(マルコ・ベロッキオ/2012/イタリア、フランス)
☆罪の手ざわり(ジャ・ジャンクー/2013/中国、日本)
☆女っ気なし(ギヨーム・ブラック/2011/フランス)
☆ゼロ・グラビティ(アルフォンソ・キュアロン/2013/アメリカ)

ラヴイズ~はTIFFで見たけど、日本公開は未定だと思う。
罪の手ざわりはフィルメックスで見た。来年日本公開!
今年もいろいろとおもしろい作品がありましたね。
両アンダーソン、カラックス、ウディ・アレンあたりはさすがの域。
拾い物はギヨーム・ブラック監督。とっても素晴らしかった。今後も楽しみ。
あと、こうしてピックアップ作業をしていて気付いたけど、邦画全然見なかった・・・本当に。
いろいろと気になる作品はあったのに、無念。


【名画座系で初見だった作品から5本】
☆マリア・ブラウンの結婚(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー/1979/西ドイツ)
☆天国の門(マイケル・チミノ/1980/アメリカ)
☆ヴァン・ゴッホ(モーリス・ピアラ/1991/フランス)
☆喜劇 特出しヒモ天国(森崎東/1975/日本)
☆砂時計(ヴォイチェフ・イエジー・ハス/1973/ポーランド)

名画座にあんまり行かなかった・・・というより、
緑の光線とかカリフォルニア・ドールズとか、過去に見た作品をいっぱい見た!
初見は少なかったんだなあ。
イメフォのピアラ特集では、ゴッホと『悪魔の陽の下に』が印象的。
ヒモ天国は最高でした。最高のひとこと。


【ビデオで初見だった作品から15本】
☆冒険者たち(ロベール・アンリコ/1967/フランス)
☆密告(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー/1943/フランス)
☆カメレオン(阪本順治/2008/日本)
☆ユリイカ(青山真治/2000/日本)
☆コックと泥棒、その妻と愛人(ピーター・グリーナウェイ/1989/イギリス、フランス)
☆アンダーカヴァー(ジェームズ・グレイ/2007/アメリカ)
☆黄金の馬車(ジャン・ルノワール/1953/フランス、イタリア)
☆見知らぬ乗客(アルフレッド・ヒッチコック/1951/アメリカ)
☆北北西に進路をとれ(アルフレッド・ヒッチコック/1959/アメリカ)
☆コンドル(ハワード・ホークス/1939/アメリカ)
☆私はゾンビと歩いた!(ジャック・ターナー/1943/アメリカ)
☆明日は来らず(レオ・マッケリー/1937/アメリカ)
☆ゾンビランド(ルーベン・フライシャー/2009/アメリカ)
☆愛の残像(フィリップ・ガレル/2008/フランス)
☆召使(ジョゼフ・ロージー/1963/イギリス)

おてもと(フリーペーパー)でフランス映画の企画をやったので、
今年の前半はフランス映画ばっかり見てた気がする。
後半のトピックとしては、以下の三点。
1.ヒッチコック先生に開眼
2.空前のジェシーブーム到来!ジェシー・アイゼンバーグさんに心酔する日々。
3.ケイリー・グラント氏の軽妙洒脱さにやられる。
結果的にアメリカの映画をいっぱい見た。
ジェシーくんに関してはもう、本当に素敵、としか言うことはありません、
今後とも応援する!!!


あと12日の間に、このリストに入り得るような作品にまだまだ出会えますように。
そして来年もたくさんおもしろい映画を見られますように。

2013年12月18日水曜日

ポーランド映画祭2013

もうブログの存在をからっきし忘れて毎日を過ごしていたけれど、
忘れがたいポーランド映画祭の記録を残しておきたいので、久しぶりに開いてみた。
パスワード覚えててよかった~~。

ポーランド映画祭2013 イメージフォーラムにて。
11月30日から、12月13日まで開催してました。

全22作品、心を惹かれてやまなかったので、フリーパス(8000円)購入。
無理に無理をかさねて12作品を鑑賞。(当初は15本くらい見れると思ってたのに、なんか誤算)
かよったねー、かよったかよった。イメフォ。

簡単に、一言ずつ感想を残しておきましょう。パンフレット掲載順に。


☆夜行列車
 (イエジー・カヴァレロヴィッチ監督/1959年/ポーランド)
廊下まで人がビッチリ居る夜行列車内の場面が延々と続く。
だから、外に出たときはすごい開放感。
ポーランド美女(三白眼)、気怠いジャズ、陰影の深い画面とか、
雰囲気ばかりが先行してた感はあるものの、その雰囲気はまぁ好きだった。
人物を詳細に描写することを意図的に辞めているような不思議な印象。

☆さよなら、また明日
 (ヤヌシュ・モルゲンシュテルン監督/1960年/ポーランド)
モルゲンシュテルンて。すごい名字だ。
余談だけどポーランドは名字天国らしくて、同姓の人が非常に少ないんですって。
人口が三千八百万くらいで、名字は四十万以上らしいですよ!!!ポーランドすご!

で、映画。
これはとっても好き~~~。青臭いほどに若々しくて、ぎこちなくてイタい恋愛の映画。
ポーランド青年とフランス女性の関係性がおもしろかった。
文化や言語や性差の障壁(=バリエラ)を、重苦しい印象をまとわずに描いてる。
ポーランドの街なかで当たり障りのない会話をする彼らをずっと撮っていて、
なんかもう、実にヌーヴェル・ヴァーグ。
主役の青年が小劇団の人という設定で、
劇団のみんなで酔っぱらって朗々と歌うシーンなんか本当に自由闊達な雰囲気に満ちていた!
この青年、ズビグニェフ・ツィブルスキ氏は、
今回の映画祭で他の作品でも何度かお見かけした。
ズビグニェフ・ツィブルスキ。この名前を覚えられる気が全然しないわ。
そして音楽は、我らがクシシュトフ・コメダ氏。
ピアニスト役でちょろっと出ています。

☆不運
 (アンジェイ・ムンク監督/1960年/ポーランド)
今回の映画祭で私が見たなかでは、最もコメディ色の強い作品だったかも。
周囲に溶け込みたい男・ピシュチクは、ドコに行っても何をしても、
不運のせいでまわりに適応できない。居場所がない。挫折に次ぐ挫折。
並み以上なんて求めていないのに、世間並みの幸せすらつかめない。
そんなミスター不運を描いたブラックなコメディ。
浅薄・不器用・臆病の三重奏は自分を見ているようでなんとも。悲しくなっちゃうよ!!!
カワイソウな人生も、突き放して見れば、
そうロングショットで見れば、喜劇になってしまう。
誰か私の人生も笑い飛ばして。

☆沈黙の声
 (カジミェシュ・クッツ監督/1961年/ポーランド)
主人公が、なんだか不思議な役どころでした。
アンチヒーローというか、ダメ男というか、何かんがえてるの?という感じの。
こういう男に引っかかりたくないものです。
クッツ監督は『沈黙』という作品も見たけれど、ショットがきれい。
斬新かと思いきや堅苦しい、みたいな、予想を裏切られるようなショットが続く。
あと余談だけどこの映画、ハエがすっごいたくさん居て気になった・・・!
男と女が甘めに話してるのに、男の背中にハエ2匹、とかね。
ポーランドはハエが多いのか??他の作品であまり見なかったと思うけど。

☆沈黙
 (カジミェシュ・クッツ監督/1963年/ポーランド)
沈黙を守る少年、司祭、街の人々の映画。
なぜ沈黙し続けるのか判らないのは、私がカトリック教徒じゃないから??
少し説教くさいというか、司祭役の俳優さんが大仰だし、
主人公の少年の聴力を表すのに耳を大写しにするセンスも「???」でした。
雪のシーンとかきれいなんですけどね。
ちなみにこの映画にはハエではなくネズミがいっぱい出てきました・・・

☆不戦勝
 (イエジー・スコリモフスキ監督/1965年/ポーランド)
スコリモフスキ監督!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!大好き。
三年前に見てドハマりした映画『バリエラ』の監督で、
私がポーランド映画に興味を持つきっかけになった人。
なんとティーチインで、御本人がおいでなすってね、
非常にユーモラスで愛すべきおじいさんでした。えへへ。

監督自身が主演も兼ねてて、街をうろうろと動きまわる。
『バリエラ』を初めて見たときから一貫して、
スコリモフスキ監督作品の「運動性」とそれを撮るカメラワークに驚嘆させられ続けてる。
本当すごいよ。
この作品の長回しもちょっと驚異的。
そして不思議なユーモラスさね。
ラストの皮肉な苦笑い加減たるや、ちょっと似たものがない。
最高!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

スコリモフスキを知らない人と文化的な話をしても、時間の無駄にほかならない!
みたいに中原昌也さんが言ってた!あはは!


☆サラゴサの写本
 (ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督/1965年/ポーランド)
これは今回の映画祭で最長尺かな。182分。
ポーランド映画祭2013の〆作品でしたー。ハス!!
夢のなかの夢のなかの夢、みたいな映画で、頭のなかはゴッチャゴチャ。
何回か見たら合理的に完全に解釈できるんだろうけど、私の頭は錯乱したーー。
狂おしいほどおもしろい。
ツイッターに書いたけど、ラブレー読んだときみたいな圧倒感がありました。
本当にね、こんなにお金かかってそうな作品があるって時点でもう驚いた。
あと、ギャグの間の取り方が日本と似てる??!!
ブルーレイ来年発売。買えるようにがんばろう!

☆戦いのあとの風景
 (アンジェイ・ワイダ監督/1970年/ポーランド)
今回の映画祭はワイダ特集みたいのが組まれて7本上映されたのだけど、
私は2本しか見られなかった!残念!
そして、2本ともあまりハマらず!!残念!
なんだか窮屈で小難しくて説教ぽい映画でした。。
ポーランド史に精通してないのも敗因?

☆夜の第三部分
 (アンジェイ・ズラウスキ監督/1971年/ポーランド)
コレはとても変な映画で、置いてかれた。
お話がよくわからなくなったのと、描写の気持ち悪さについていけず!残念!!

☆砂時計
 (ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督/1973年/ポーランド)
心から興奮!!!すごすぎるハス!
どうやったらこんな映画ができるのか・・・
バリエラの彼が彷徨い歩く異次元空間。
仕組みのわからない広大かつ唐突なセットと、流れるような移動撮影にクラクラしっぱなし、
打ちのめされた。呑み込まれたーーー。
ラストショットまで戦慄がとまらない。
素晴らしい映画体験をありがとうハス。
コレは未ソフト化なの、心底かなしい。紀伊國屋さん、コレもお願い!!!

☆鉄の男
 (アンジェイ・ワイダ監督/1981年/ポーランド)
ハスの182分はワクワクしどおしなのに、
ワイダの152分はかったるく感じてしまうのは一体・・・
いやあ長かった!!!
今回の映画祭で悲しかったことは、ワイダとわかりあえなかったこと。
来年はハス特集で頼みます。

☆イーダ
 (パヴェウ・パヴリコフスキ監督/2013年/ポーランド)
ジャパンプレミアは結局この1本しか見られず。
息をのむほどきれいなモノクロ画面で、満足。
主演ふたりの対照的な存在感がとてもうまいなと思った。
イーダの禁欲ヅラが印象的。
美しい、美しい映画。


はい。以上です。

今回の映画祭で、ポーランドに興味津々になっちゃった。
空前のポーランドブーム到来!!
ポーランド文学とか全然読んだことがないし、
ポーランド史の知らなさも痛感したので、お勉強しよう。
いつの日かポーランド旅行できるといいな、な!!!
とにかくポーランドブーム!

でも、12本も見たのに全然ポーランド語を習得できず。
はい(タック)、いいえ(ニエ)しか。ポーランド語難しいわ。

ともあれありがとうイメージフォーラムさん!!!2週間楽しかった!

2013年10月21日月曜日

『芝生は緑』

☆スタンリー・ドーネン監督/1960年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ケイリー・グラント氏見たさに


グラント氏、ロバート・ミッチャム、ジーン・シモンズ、デボラ・カー。豪華ですね。

ミッチャムさんはどうしても『狩人の夜』のイカレ野郎の印象が強すぎて、
こういう感じの映画に出てくると違和感!
普通に恋愛とかしてるのが不自然!(失礼)
けど、シブくてなかなかいいですねえ。何やっても激巧い。


モーリス・ビンダーによるタイトルシークエンスが一番の見どころかも。
モーリス・ビンダーさんはいろいろな映画のタイトルデザインをやってるみたいです。
007シリーズとか、太陽がいっぱいとか、ラストエンペラーとか!
この映画でも超絶微笑ましいタイトルシークエンスを作られてる。
下の動画、PCから見れます。
闊達に遊びまわる赤ちゃんたち。かわいい!!!
本編への期待がいや増すでしょう!

で、本編はというと、かなりまったりしたトーン。
英語が解れば台詞のおしゃれ感とかも楽しめるんでしょうけど、
いまひとつまだるっこい感じがする。
女性陣の衣装は豪華ですが!!
グラント氏の魅力はおさえ気味。
そうそうー、グラント氏やミッチャム氏をもっと自由に泳がせてほしい感じがしてしまう。

スタンリー・ドーネン監督、『恋愛準決勝戦』とか大好きだけどね。
(なぜなら、アステア様が出てるから)
まぁタイトルデザインは一見の価値ありと思います。

2013年10月15日火曜日

『ロンゲスト・ヤード』

☆ロバート・アルドリッチ監督/1974年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・もうすぐ、『カリフォルニア・ドールズ』が公開されるので!


私的オールタイムベストのうちの一本、『カリフォルニア・ドールズ』!!
もうすぐ、オーディトリウム渋谷にて日本最終上映されます(詳細こちら!
ロバート・アルドリッチ監督の遺作。
早く見に行きたくてたまらないので、アルドリッチテンションを高めるためにコレを鑑賞。
アメフトのお話ですね。ちなみにルールは一切知らない。

主演を務めるのはバート・レイノルズ。
言うべきことではないと思いつつも言及せずにはいられないのですが、
生理的にこの人を受け入れられない。どうしても。
色黒マッチョで胸毛がワッサリ生えていて物凄いヒゲで、暑苦しいことこの上なし。
なんだよこのポーズ&微笑み。

ブギーナイツのときなんかはもうだいぶ歳を重ねていて、濃度がうすまってきてるのですが、
コレはまさに脂の乗り切ってた時期なので濃度300パーセント、
しかもコイツは、ある美人さんのヒモなんですね。信じがたい・・・
こんな暑苦しい人に家のなかをうろつかれるなんて悪夢もいいとこだ。

そんでコイツはその美人さんを鬱陶しがって(ヒモのくせに)、別れを切り出し(ヒモのくせに)、
女の車をうばって飲酒運転で逃亡。
もちろんお縄頂戴、ムショ行きになる。
ムショ入ってからはヒゲをスッキリ剃って髪も短くするので、濃度が20パーセントくらいは減少。
ねちっこくていやらしい視線やウザい喋り方は変わんないけど。

まぁ見事に私はこの人に対して嫌悪感ばかりをつのらせたので、
最初20分くらい見た段階で「もう見るの止そうか」とも思った。
けど、アルドリッチを信じて、バート・レイノルズばかりに気を取られるのを止して、見ました。


要するに囚人VS看守のアメフト対決の映画。
バート・レイノルズは元アメフト選手という設定で、囚人チームのリーダーを任されるのですね。
囚人がヒーローで看守がヒール、という図式がとってもアルドリッチ。
いい気の仲間をムショ内でドンドン作ってくプロットも。
(看守にウサ晴らししようぜ!的なノリで集まる)

独裁的な刑務所長は、バート・レイノルズに、八百長で負けることを命じる。
負けなければ刑期をいくらでも伸ばしたるよ、と。
でも、後悔しない生き方とは、言われた通りにワザと負けることなのか。
それとも、30年間ムショ暮らしになったとしても、権力に屈しないことなのか。
悩むレイノルズに、トレーナーさん(老人)の鶴の一声がただただ最高。
男の誇りを賭けた闘いが展開される。
そして、意を決したレイノルズさんを、不覚にもステキと思ってしまう。

囚人チームには基本的にかっこいい人がいない。まぁ全員犯罪者ですし。
小汚い粗野なメンバーばかり。
けど、だんだんこの狼藉者たちを応援してしまっているから不思議。


試合のシーンは、本当に肉弾戦といった感じでぶつかりあう。
おもしろい画面分割なんかのおかげもあって、血沸き肉躍ってしまうのですよ。
そして、勝利の瞬間の、大興奮のカットさばきね。
ミーン・マシーン!ミーン・マシーン!!(←大声)
バート・レイノルズの不愉快さは前フリだったんだ、きっと。
アルドリッチのアツい演出に身を任せよう。


  

『ダイヤルMを廻せ!』

☆アルフレッド・ヒッチコック監督/1954年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・ヒッチ強化中!


『北北西に進路を取れ』でヒッチ先生に開眼して以来、
ほぼ週一のペースで目についたものから無秩序に彼の作品を見てるんですけど、
ビックリするくらいハズレなく、どれもべらぼうに面白いです。
みんな知ってただろうけど。私は今さら気づいたので。

冒頭、レイ・ミランド&グレース・ケリー夫妻の幸せそうな朝が映る。
新聞を読んでいたケリーさん、ある記事に目を留める。
それは、ある船の帰港を知らせるものだった。
場面が変わって港。一人の男(ロバート・カミングス)が船から降りてくる。
また場面が変わって、その男と、真っ赤なドレスに身をつつむケリーさんがキスをしてる。
つまりケリーさんはこの男と不倫をしてるのですね。

ここまでを全く台詞なしに、2分弱くらいでサッサと処理してしまう。
普通なら10分くらいは要するでしょう、というシーンなのに。
こういうシャープさ、かっこよくてシビれてしまう。

で、その不倫に気づいてる夫は、ある男を金で雇って妻殺しを依頼、
保険金をガメよう・・・という恐ろしい計画を立てる。
完璧に見えた計画に少しずつズレが生じ、ほころびが生じ・・・
いちいち絶妙なタイミングで絶妙なハプニングが起こって、演出の妙に唸るのみですよ。

また雇われた男役のアンソニー・ドーソンさんの顔が怖くて。
鋭角!って感じ。鋭角の爬虫類フェイス。
いかにも悪いことしてそう・・・
この人の「最期」はあまりに劇的で、あんなの傍で見たくないわ!かわいそうなケリーさん。
対して黒幕の夫はというと、紳士的で穏やかな魅力あふれる、賢い男性なのですね。
こういう配役も巧い。

不倫相手が推理小説家、という設定が活きてくるんですけど、
この人は正義感という感じで、不倫相手としては魅力を欠いているような。
ケリーさんがそれでいいなら、いいんですけどね、私は。

グレース・ケリーさんは途中まではいい気の不倫妻、ゴージャスで、
いつもながら美しさ満点に光り輝いている!!!
恐ろしい事件のあとは、ひたすらかわいそう・・・美人はそんなに悲痛な顔で泣かないで。
こっちの胸が痛くなる。
迫真の、熱演だと思う。

捜査を進める刑事さんはジョン・ウィリアムズ。
ゆるやかに事件の核心に迫っていく様子は、少しのもどかしさと相まって見逃せない。
なんとなく善良そう、それでいて鋭い、っていう役。素晴らしかった~。

あ、今回のヒッチ先生カメオ出演は、けっこうわかりやすく写真にまぎれてた。お茶目。

 才気煥発、ヒッチコック様の傑作サスペンス。
こんなにも完成度の高い作品ばかり次々と撮りまくっていたヒッチ先生は、
サスペンス映画の神様という呼称に全く恥じないというか、まさにそのとおりという感じ。
正直、一作見るごとにビックリしています。

『タロットカード殺人事件』

☆ウディ・アレン監督/2006年/イギリス、アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・ヒューさん見たさに


ウルヴァリンのプロモーションでヒュージャックマンさんがいっぱいテレビに出てて、
この作品のことを思い出したのです。
ウディ・アレン監督がイギリスで撮った作品。
公開時にブンカムラで見て、うきうき気分で劇場をあとにした覚えがあります~。

ウディ・アレン監督は近年いろんな場所で映画を撮っているけど、
ロンドンという土地はそのなかでもかなり、ウディ・アレンさんのカラーにしっくりくる。
(行ったことないけど)
バルセロナ等の太陽さんさん系よりも、薄くくもった空のほうが合っていると思う。
この作品でも雰囲気たっぷりにロンドンを撮ってます。
ヒュー宅の英国庭園なんかも、綺麗。
音楽はチャイコフスキー等のクラシック中心。
そんななかでそれぞれのキャラクターが魅力いっぱいに活動していて、好きな作品。

ジャーナリスト志望のアメリカ人女学生(スカーレット・ヨハンソン)が、マジックショーの舞台にあげられたとき、最近亡くなった有名ジャーナリストの亡霊(イアン・マクシェーン)と遭遇、彼から事件の鍵となるスクープを聞かされる。彼女はマジシャン(ウディ・アレン)と協力し、真相究明に奔走する。 という映画。(ウィキペディアより)


ヒューさんは由緒正しいおうちの跡継ぎで、紳士的でルックスも良くて、それはもう素敵。
一分の隙もないでしょう。スカヨハならずとも恋に落ちてしまう。
悠々たる振る舞いが板についてる。どうしてこんなにも英国貴族然としてるの。

そしてスカーレット・ヨハンソンさん。ジャーナリストの卵。
丸メガネにダサい服装、サバサバしつつも情に流されやすい。
とってもイキイキと演じていて、いい女優さんだなーと思いました。
けど、常にダサい服を着させるわけにはいかないよね、ってんで、アレン流の大サービス。
こんなにも大胆な水着を・・・!
わかってるね、アレン爺。ありがとう。

ウディ・アレンはマジシャン役、スカヨハとともに事件解決に挑む役として、
準主役くらいの出ずっぱり方をしています。
うれしそうにマジックを披露する姿は不覚にも愛らしい。(なんとなく忘年会臭が漂う)
近年の作品では一番彼のしゃべくりを楽しめる。
彼オリジナルの「記憶方法」は、ずるいくらいバカバカしいおもしろさ。
スカヨハともナイスコンビですね!


素人探偵が謎解きをしていく様子がテンポよく描かれて、
そこに各種ギャグとか、ヒューさんとのロマンスとかを盛り込んでくれる。
往年の『マンハッタン殺人ミステリー』の英国版、みたいな趣もありますね。
こういう良作を撮り続けてほしいものです!!

『或る夜の出来事』

☆フランク・キャプラ監督/1934年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・かねてから気になっていたので


スクリューボールコメディの傑作、みたいに言われてる作品で、
アカデミー賞では驚異の五部門受賞(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)。
クラーク・ゲーブルさん!キザだぜ!!!
ケイリー・グラント氏のような軽妙さはないけれど、伊達男然としていて、
余裕をかました大人の男性ですね。
あまりコメディ向きではないように思うけど、意外にも笑わせてくれた。

ヒロインはクローデット・コルベールさん。
『青髭八人目の妻』、『パームビーチ・ストーリー』、私にとって思い出深い作品。
かわいらしいコメディエンヌ、タヌキっぽいファニーフェイス。好き。
この作品では世間知らずのお嬢様、きかんぼうといった感じ。
この人は「真顔がおもしろい」タイプの演者だと思う。
同タイプにはジャン=ピエール・レオー氏とかがいるんですけど、
真顔なのにフザけてるみたいな人。
この作品でも、本人は真剣なのになんか笑えてきちゃう、という。

けどヒッチハイクシーンなんかではチラッとスカートをたくし上げるお色気も持ち合わせてる。


このふたりがいがみ合いつつも惹かれ合う、
その様子をテンポ良く、ロマンチックに、鮮やかに描いてる。
カーテンを「ジェリコの壁」に見立てる演出、すごくシャレていて楽しい。
うまいことオチるのが実にいいですね!

ムードたっぷりでアメリカ映画黄金期!という感じの作品でした。

『有頂天時代』

☆ジョージ・スティーヴンス監督/1936年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・アステア様を崇拝してるので!


そう崇拝。崇めて拝む(あがめておがむ)。
お友達がこの映画の話をしてて、途端に見たくなって借りてきた!

どんな女でも、アステア様と踊ると一瞬でほれてしまう。
アステア様のほかに神なし!!!!!
偉大なるアステア=ロジャース黄金コンビの第6作!!!

アステア様がダンサー役、ロジャースさんがダンスの先生役という設定のおかげで、
ミュージカルナンバーが多く、踊るアステア様を堪能させてくれる、まさに有頂天な幸せの映画。
驚異的としか言いようのないことをいとも簡単にやってのけるアステア様。
「洗練」という言葉は、彼のために存在する。


最初のデュエットパートの軽やかさも忘れがたいけれど、
白眉はやっぱりアステア様のソロ、Bojangles of Harlemでしょう。
黒塗りのアステア様が狂ったように踊りまわる。
これは、黒人タップダンサーのビル・ボージャングル・ロビンソン氏に敬意を表したものらしいです。
シャーリー・テンプルちゃんと踊ってる映像を見たことあるくらいで、
このボージャングルさんのこと、よく知らないのだけれど。
もう、圧巻。あきれるほど素晴らしい。
たくさんの女の子たち(踊りとっても下手)との「吸収ダンス」、スクリーンで見たいなぁ。
そして、自分の影と一緒に踊るところなんて、もう言葉もないよ・・・!これぞ芸術!
この作品のダンスシーンを見て心を動かされない人とは金輪際口をききたくないわ。

また、ストーリーもカラッと明るいラブコメディで、
終盤では爆笑するアステア=ロジャースも見られる。
私はジンジャー・ロジャースの笑顔が大好きです!
(アステア様は言わずもがな。っていうか何してても好き)

コメディリリーフとしてアステア様の友人役にヴィクター・ムーアが配されてる。
インチキっぽいマジシャンで、とっても楽しい。
ムーア氏のお相手役にヘレン・ブロデリックさん、仏頂面が笑いをさそう。

ムーア&ブロデリックと一緒に、4人でのダブルデート、
雪景色のなかでのデュエットがまた美しく楽しい雰囲気で、ソーキュート!!
アステア様の伸びやかな声にうっとり。



花も蝶もアステア、朝も夜もアステア。
完全にアステア様信者です。

2013年10月2日水曜日

『ウェス・クレイヴン's カースド』

☆ウェス・クレイヴン監督/2005年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ジェシーくん見たさに


愛ってすごいですよ。
この作品はホラーコーナーにあって、ジェシーくんが出てなければ見向きもしない上に、
万が一見たところでケチしかつけないような内容なんですけど、予想外に楽しめた。愛ゆえ。
クリスティーナ・リッチとジェシー・アイゼンバーグの姉弟はある日オオカミ人間にかまれて、
自分たちも徐々にオオカミ人間と化していく。
早くこの呪いを解かなくては・・・という映画。

オオカミ人間にかまれると、主として次のような変化が。
・生肉を好んで食す(血を求める)
・身体能力が驚異的に上がる
・男性としてor女性としての魅力アップ
・犬にきらわれる

ジェシーくんは男子にはいじめられ、
同じクラスの女の子には「誰ですか?」とか真顔で訊かれるサエない高校生。
けど、かまれてからはカーリーヘア(上の画像参照)をのばしてイケメン風味に。
驚異的な身体能力を発揮してレスリング部の部長を撃退、女の子の視線を集めるようになる。
ゲイの同級生(レスリング部の部長)にまで迫られるほど魅力アップ!

この、ゲイの同級生に迫られるシーンが一番の見どころでした。おもしろかった~。
夜、生肉を食べようとしてるとこに急にピンポーン・・・出てみると例のレスリング部の部長。
「実は俺、オマエが好きだったんだ。オマエもわかってたろ?」とにじり寄る彼。
僕はホモじゃない!とオロオロしまくるジェシーくん、情けない顔と早口が超おもしろい。
逃げるように家のなかに入ると、飼い犬もオオカミ化して、暴れまわってる。
やばい!と玄関を開けると、まだゲイの同級生が!!!「まだ話したいことがあるんだ・・・」
それどころじゃないのだよ!!!
こういう、真剣みを削ぐ演出がけっこうたくさんありました。
ジェシーくんの存在って素晴らしい。いいコメディアンっぷりを発揮してました!

スコップも形相も貴方には似合わないよ。


ウェス・クレイヴン監督のほかの映画を全然見たことがないので、
なんとも言えないけど、この映画に関しては怖くなかったです。
血は出るけど、いかにも作りものめいているから。
ここで出てくるんだろうなぁ~という箇所でご丁寧にジャーンと出てくるから、なんていうか安心。
オオカミ人間も安っぽくて変な感じ。

クリスティーナ・リッチはなんというか・・・姉御肌演技が鼻につく。なんかイラっとする。
そういうキャラじゃないじゃん!すごく違和感。
バッファロー66のときの可愛さは幻だったのか???

ただ、ジェシー・アイゼンバーグファンは絶対楽しめる映画。
犬をかわいがるジェシーくん、
全裸のジェシーくん、
わおーーーん!!!と遠吠えるジェシーくん、
ガタイのいい若者をブン投げるジェシーくん・・・
サエないところとかっこいいところ両方楽しめるし、もう、好きさもいや増しちゃう。


もうすぐ公開の『グランド・イリュージョン』も、
ジェシーくん見たさに劇場まで行ってしまうかもしれません。公式サイトこちら。
彼の長く美しい指から繰り出されるマジックを見たい・・・
TIFFで上映される『ザ・ダブル』も行くつもり!!!


『誘拐魔』

☆ダグラス・サーク監督/1947年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ちょっとしたサークブームで


これはシブツタの貴重品コーナーみたいなところにVHSがあるのを見つけ、
いそいで借りてきた。

シャープな囮捜査もの。
懐中電灯で照らされたような粋なタイトルシークエンスから期待高まりまくる。
若い娘が次々に行方不明になる事件が起きる。
その都度、犯行を予告する謎のポエムが警察に送られてくる。
ダンスホールで働いているルシル・ボールは、仲間が犠牲になったのをきっかけに、
警察の囮捜査に協力することとなる・・・という映画。
警官役でチャールズ・コバーンが出ています。
滑稽かつ善良かつふてぶてしい存在感で、とってもいい味。

潜入捜査をするルシル・ボールさんも、メイド服やらドレスやらいろんな衣装を身にまとい、
いきいきと利発な様子で素人探偵やってます。

怪しすぎる男とか怪しすぎる証拠品(?)とか薄気味悪いポエムとか、
スミからスミまで見逃せない。
ルシル・ボールの衣装にまで気をはらってないといけないのです。
ヒッチコックばりのサスペンス!!

のちに撮ることになる『天はすべて許し給う』等のメロドラマとは毛色の異なる犯罪劇。
サークさんの多才さを見せつけられました。

『愛する時と死する時』

☆ダグラス・サーク監督/1958年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


第二次世界大戦末期のベルリンが舞台の、戦争メロドラマ。
フランス版ポスター、なんか・・・ロマンポルノみたい。

主演はジョン・ギャビン。
いまウィキペディア見て知ったのですが、この人の奥さん(役ではなくて実生活の)は、
コンスタンス・タワーズさんなんですね。
裸のキッスのこの人!
うわ~おっかない。おっかない美人。

ジョン・ギャビン氏は『悲しみは空の彼方に』にも出てたけど、
私はロック・ハドソンさんより好き~。似てるけど、ギャビン氏のほうが暑苦しくないので。

で、ヒロイン役はリーゼロッテ・プルファーさん。
なんとなく幸の薄そうな可憐美少女、という感じ。

このふたりの悲恋物語が、素晴らしいショットの連続で展開していく。
もうどこを切り取っても息をのむしかない。構図の力とライティングの美しさでしょうか。
 
 
豪華なディナーに行くためのよそ行きのドレスをギャビン氏に二着みせて、
一方はすぐに着られるけどもう一方はお直しに30分要するの、どっちがいい?と選ばせる。
ギャビン氏はピンクのドレス(30分待つ)を選ぶ。
こういうささやかな演出に幸福感をにじませていて、うまいですね。

 
 
こういう戦争ドラマはなんともやりきれなくて、悲しいので、あんまり見たくないのが本音。
中盤の美しさ・幸せさとラストとのギャップもすごいので、いよいよ悲しくなってしまいました・・・
 

『風立ちぬ』

☆宮崎駿監督/2013年/日本

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・イオンシネマ(港北)

☆なぜ見たか・・・予告編見て、おもしろそうだったので!


あんまりジブリ作品を見たことがないです。
トトロとか魔女の宅急便は15年以上見てないので覚えてなくて、
千と千尋とかハウルは、見たけど、意味わからんの一点張りって感じなので、
特に好きな作品とかもない。
ポニョやらゲドやらコクリコやらアリエッティやらは見てすらいない。
なので系統立てて語ったりすることはまったく出来ません!(のっけから言い訳三昧)

けどなんでかコレには興味津々で、わざわざ見にいきました。

映画館で見てよかった~~。
風の表象の美しさよ。緑色にすいこまれるよう。
紙飛行機をとばすシーンもすごく美しくて、好きでした!!

アニメーション自体にも全然詳しくないけど、
ここまで風の視覚化にこだわったアニメーションを初めて見たと思う。
個人的には、ダグラス・サーク監督の『翼に賭ける命』を思い出した。
風にゆれる草原、スカート、髪の毛・・・いちいち描くの大変そうだけど、
作業は報われてますよ。美しい。

手放しに賛辞を贈りたいのはここまでで、あとはフーンって感じでした。
主人公をあまり好きになれなかったのもあると思う。

あとポスターとかに「生きねば」って書いてあったけど、
特に生きねば感はなかったような。

まぁ、あんまりジブリに関して的外れな私見を露呈しまくる前に、黙っときます。
(ジブリマニアみたいな人こわいんだもん)

2013年9月26日木曜日

『素晴らしき休日』

☆ジョージ・キューカー監督/1938年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・グラント氏見たさに


ケイリー・グラント氏のアクロバットが見られる作品!明るくてロマンチック!

ケイリー・グラント氏は若くして両親を亡くし、働きづめだった。
彼は人生初めての休暇先で、よく知らない女性(ドリス・ノーラン)と恋に落ちて結婚することに。
帰国後、その女性の家を訪ねると、とんでもないお金持ちだった・・・という映画。

ノーランを愛しつつも、厳格な家に縛られたくないグラント氏は、
ノーランの姉、キャサリン・ヘプバーンと意気投合する。
彼女は聡明かつリベラルかつロマンチックかついい人(一緒にアクロバットしてくれる程)で、
ブルジョワ特有のいやらしさやしゃらくささ、おカタい感じとは無縁。

そして、ノーラン&ヘプバーンの弟役は、リュー・エアーズ。
一時期ジンジャー・ロジャースの旦那さんだった人ですね。
エアーズ氏も変わり者の好人物を演じてる!


豪邸で大きなパーティーがおこなわれているさなか、
パーティーになじめない面々(グラント、ヘプバーン、エアーズ、グラント氏の友達夫妻)は
ちいさな遊戯室で彼らなりの宴を催す。
歌ったり踊ったりアクロバットしたり・・・気取らない雰囲気が本当に楽しそう。
私もココに入れてほしい!!
決まり事や見栄なんかを逸脱して子どものようにハシャいでる。
ケイリー・グラント氏、夢見る好青年がとってもハマり役で、
キャサリン・ヘプバーンとの相性ももちろんぴったり。

本当ナイスカップルですよね。『赤ちゃん教育』大好き。

うれしくてとんぼ返りをするグラント氏、
キャサリン・ヘプバーンと目線が合って、抱擁・・・のラストシーンは、
一切の説明を排除しているのにすべてが伝わってくる演出と演技!

グラント氏とヘプバーンさんの魅力満載、楽しい映画です。

『東京暗黒街・竹の家』

☆サミュエル・フラー監督/1955年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


題名意味わかんないわ~~~。
国辱も国辱な映画です。
日本て言ったらフジヤマでしょーゲイシャでしょー。的な感性で作られてるよう。
もう終始フジヤマ。

主演のロバート・スタックはなんだか変なあばらやみたいのに住まわされます。
箪笥から布団セット一式を引っ張り出したり(枕は敷布団に縫い付けてある様子)、
寝起きする部屋のスミっこにぽつねんと小さな風呂釜が置いてあったり、
風呂につかりながら箸でベーコンエッグトーストをついばんだりしてましたよ。
パンを箸で食すなんてね(しかもin風呂釜)。
せまそーー。

それはもう、変な映画であることは確かだけど、
ハードボイルドで男らしい、力強い映画でもありました。

なんとなく終始のっぺりした印象のロバート・スタックに対し、
ロバート・ライアンのアクの強さ、雄々しさよ!
この人の存在だけで映画が成り立つ、と言ってしまいたい。
けどなぜかだんだん菅原文太チックに見えてくる。私だけかしら。

ダブルロバート(スタック&ライアン)の関係性にはそこはかとなくホモ臭がただよう。


私の狭隘さでは、日本の変な描写をすんなりとやり過ごせなくて、
そのせいでちょっとお話にハマりきれない部分がありました。未熟者!
変な描写に気をとられるうちにお話がドンドン進むので要注意。

サミュエル・フラー監督作品は、『裸のキッス』に度胆を抜かれ、
『ショック集団』にショックを受け、『鬼軍曹ザック』に心底感動し、
見るのはこれで四作目。

ラストの大立ち回りにはうれしくなっちゃいました。
映画とは戦場のようなものだ。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。ようするにエモーションだ!!!
ですよね、フラー監督!

ということで、素晴らしき国辱映画。(変な日本語!)

2013年9月24日火曜日

『不良少女モニカ』

☆イングマル・ベルイマン監督/1952年/スウェーデン

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・ベルイマン監督に歩み寄りたくて


先日『夏の夜は三たび微笑む』を見たので、次はコレを。
孤独な青年ハリーは、モニカという少女と出会い恋に落ちる。やがて二人の間には子供が出来るが、モニカはハリーと子供を捨てて立ち去ってしまう。 という映画。

『夏の夜~』と同様、自由闊達な雰囲気に満ちてた。
超向こう見ずな少年少女のひと夏の恋。
エネルギーが暴走して、イタさも含めてつかの間輝く。

ふたりが過ごすストックホルムの夏の海が本当にきれい。
短い夏、一瞬の逃避行の、まさに一瞬のきらめきって感じ。

けれども、真面目なハリーと奔放なモニカは、
世間とのかかわり方において根底から大きな違いがある。
現実が立ちはだかるとモニカは逃げてしまう。
愛で人が変わるなんて欺瞞!
ベルイマン監督の視線は容赦なく冷徹ですね。

幼い子どもを抱えるハリーのやさしい顔とともに、この映画は終わる。
そのやさしさにせめて救われようではないか。(口語では使わない口調)


ベルイマン作品を見慣れてないせいか、少々かったるい感もあったのですが、
公開当時からしたら強烈な映画だったと思う。
モニカの美しい「肉体の映画」という点においても。

『自由の旗風』

☆ダグラス・サーク監督/1955年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


出た!またしてもロック・ハドソン!!

正直なところ私は同氏の魅力がよくわからず、
思うことといえば加山雄三に似てんなぁ・・・くらいのものです。
で、この作品、彼の役名が原題(CAPTAIN LIGHTFOOT)になってるところからもわかるとおり、
「ロック・ハドソンを楽しめ!」ってくらい出ずっぱりで、もう、ハドソンマックス。
おなかいっぱい~。

20世紀初頭のアイルランドにおける、地下組織の暗躍を描いた作品。
正直なところ私は、アイルランドの細かい歴史とか、イギリスとの関係性とか、
詳しいことはわかってないです。
麦の穂をゆらす風とかバリーリンドンが思い浮かぶくらい。
けど、スッキリと描ききるのが難しい題材なんだろうなぁ~ということくらいはわかります。

しかしこれはサーク作品。政治映画だけど、構造はメロドラマ。
ラストの幕切れの良さには舌を巻かざるを得ない!
難しい問題もキッスひとつで〆てしまう・・・

そして!衣装(特に女性陣の)とセットの華美さたるや!
コスチュームプレイとしての時代劇は、サーク監督にとって幸福な題材だと改めて思った!!

シネマスコープなので私のちっさいテレビで見るとかなりさびしい感じになるのだけど、
スクリーンで見たら圧巻だと思う。
アイルランド(オールロケ)の美しい風景が。
アイルランドに興味津々。ジョイスとか読んでみよっかな・・・


それにしても『自由の旗風』って、かっこいい邦題ですよね。
サークのキラキラパッケージシリーズは、全部邦題が素敵。

自由の旗風 (Captain Lightfoot)
悲しみは空の彼方に (Imitation of Life)
心のともしび (Magnificent Obsession)
天はすべて許したもう (All That Heaven Allows)
ぼくの彼女はどこ? (Has Anybody Seen My Gal)
愛する時と死する時 (A Time to Love and a Time to Die)
翼に賭ける命 (The Tarnished Angels)

・・・これで全部だっけ。
かっこいい~。

『天はすべて許し給う』

☆ダグラス・サーク監督/1955年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


ダグラス・サーク監督作品のなかで、初めて見たのがこれだった気がする。
主演はジェーン・ワイマンと、ロック・ハドソン。

冒頭、ゆる~~~く動くカメラが、アメリカ郊外に立ち並ぶ家や木々を美しくとらえると、
「ジョン・ウォーターズ作品みたい!!」と思っちゃう。
本当ならジョン・ウォーターズを見てダグラス・サークを想起するのが正式なんだろうけど、
私は、ダグラス・サークのほうをあとに知ったので。
(ここからもわかるとおり、本当にジョン・ウォーターズ監督作品のフォルムはしっかりしてる!)

ジョン・ウォーターズの作品と異なるのは、そのあとに展開する物語もどこまでも美しく、
メロメロのメロドラマであること。
メロドラマ、つまり、
周囲には反対される!
けど、障害が大きいほど燃える!
性描写はなし!
美しい音楽(メロディードラマ)!
こんな感じの映画。

描かれる内容がいかに通俗的であっても、サーク監督の演出は微塵も通俗的ではないのです。
ここが韓国ドラマとの違い。(韓国ドラマ見たことないくせに)

ヘタな演出でやられたら失笑してしまうようなシーンも、
あまりの美しさに落涙してしまうようなシーンに昇華する、サークの魔法。

ジェーン・ワイマンは未亡人の役。
娘と息子は大学に通うために家を出ていて、広い家に一人で暮らす。

ロック・ハドソンは、ジェーン・ワイマン宅の若い庭師。
スローライフの先駆けみたいな感じで、ロハスな暮らしを楽しんでる。
この作品でも加山雄三に見えてやまない。その上、髪型がすごく変だと思う。

この二人が歳の差カップルと相成って、結婚をしたがるものの、
近所の俗悪な連中からはスキャンダラスに噂され、不当な迫害に遭う。
ジェーン・ワイマンの子どもたちからは猛反対を受ける。
愛し合ってるのに・・・ という映画。

計算しつくされたテクニカラーが美しい。色彩豊かに展開される季節。
ロック・ハドソンが庭師、というのも良い設定ですね。
そして階段や鏡の使い方が的確でお見事なのは、サーク作品の常。

ジェーン・ワイマンの娘役にも興味深い設定が。
心理学を勉強し、何かにつけてフロイト理論を振りかざしてくる、っていう、
あんまり仲良くなれなさそうな女の子なのだけど、
いざ「母が年下の庭師と再婚?!」ってなると理論などどうにもならず、
もうオロオロと泣くのみ。
娘さん、メロドラマにフロイトはそぐわないのだよ。
恋に、理論もクソもないのだから!!!
書いててはずかしいわ~~。


トッド・ヘインズ監督によるリメイク作品『エデンより彼方に』も、私は好き!!
そっちもひさしぶりに見たくなりました。

『M★A★S★H マッシュ』

☆ロバート・アルトマン監督/1970年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・久しぶりにとっても見たくなったので


朝鮮戦争下の野戦病院が舞台の、超反骨映画!!!
左がドナルド・サザーランド、右がエリオット・グールド!!!
やっぱりべらぼうにおもしろい!!しびれるアナキズム!!!

戦闘シーンは出てこない。
野戦病院での手術シーンと、彼らの度を越した悪ふざけとを交互に描いてる。

お堅い感じの女性将校(サリー・ケラーマン)のベッドシーンを生中継したり、
彼女がシャワーしてる小屋を壊したり。
飲酒しまくるし、まるでモラルがなくて傍若無人に振舞う。ハチャメチャに。

リアルな手術と下品な悪ふざけとを交互に見ているうちに、
戦争の狂気が浮き彫りになってくる。
登場人物の誰も、戦争への憤りとか嘆きを口にしてはいないのに・・・。
「悪ふざけ」は、戦争の狂気に呑み込まれないための彼らなりのやり方に見えてくる。

メイキングを見たら、脚本を無視してアドリブばかりしていたようです。
みんなイキイキと振舞ってて、それぞれが個性的。
このあと『バード★シット』に主演することになるバッド・コート氏も、チョイ役で出てる。

特筆すべきはドナルド・サザーランド氏の素晴らしさ!!!!!
声がもう凶暴で、目つきも只者ではない感じ。色眼鏡がよく似合ってる。
他の映画でこの人を見た記憶があまりないのだけど、
この一本だけで、私のなかで相当好きな俳優さんというポジション。
とにかく声と目つきが素晴らしく最高!!
エリオット・グールドとの共犯な雰囲気も見ててぞくぞくする。

あとはホットリップスことサリー・ケラーマンね。
あんなに度重なる嫌がらせを受けてるのに、終盤のアメフトシーンで、
まったくメゲずに応援してる様子を見ると、バカなのかな?とまで思えてしまう・・・
あの表情は比類ないです。最高。

こまかいエピソードをまとめるのは、野戦病院内の「スピーカー」の存在。
このスピーカー、人格を持ってるみたい。
ラストのたたみかけなんて、ちょっと他に考えられないくらい、痛快。
大好きな大好きなラストシーン!!!

そしてスピーカーから度々流れるのは、日本語曲。
東京シューシャインボーイとかね。
(この曲、柳原さんのライブに行ったときに彼がうれしそうに歌ってた)

アルトマン監督のセンスすごすぎる。もっともっと見たい~~。

2013年9月20日金曜日

『見知らぬ乗客』

☆アルフレッド・ヒッチコック監督/1951年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・ヒッチ強化中につき


これは!!!
いままでに見たヒッチコック作品のなかでも、指折りのおもしろさ!!!

 

アマチュアのテニス選手ガイ・ヘインズは、浮気を繰り返す妻ミリアムと離婚したがっていた。そうすれば上院議員の娘であるアンと再婚できる。ある日、ガイは列車の中でブルーノという男性に出会う。ブルーノはガイがミリアムと別れたがっていることをなぜか知っており、彼の父親を殺してくれるなら自分がミリアムを殺そうと交換殺人を持ちかける。そうすればお互いに動機がないので、捕まる心配もないという訳だ。ガイはブルーノが冗談を言っていると思い、取り合わなかった。しかし、ブルーノは勝手にミリアムを殺してしまう。 という映画。(ウィキペディアより)


勝手に殺してしまう、って、インパクトある日本語~~。

ブルーノを演じているのは、ロバート・ウォーカー。
大人になりきれていないマザコンのサイコパスを、迫力満点に、気味悪く演じてる。
ねちっこい演技!

あの恐ろしい、テニスの試合シーン・・・
(みんながラリーを見て首を左右に振ってるのに、こいつだけ超まっすぐにガイを見つめてる)
そして、パパのベッドに寝ているシーン・・・
(電気がパッと点くとこいつがニヤニヤと横たわってる)
ヒッチ先生の比類なき演出とあいまって、私の鳥肌はもう炸裂寸前。

ちなみにロバート・ウォーカーは、この作品の撮影後、精神病院で死亡したとのことです・・・・・・


冒頭、ふたりの男の「足」だけを映し、それぞれが電車に乗り込み、出会うまでを一気に描く。
そこからはもう、ノンストップヒッチ!!!!!!
(ノンストップヒッチ:ヒッチ大先生の超絶技巧がのべつまくなしに展開される様子)

遊園地が重要な舞台になっているのも、すごいアイディアじゃないですか。
(ハイスミスの原作読んでないから、原作のアイディアかもだけど)
大人になることに失敗した主人公が、子供の遊び場である遊園地で、殺人を犯す。
そして最後にはメルヘンチックなメリーゴーラウンドで死闘を演じる・・・
皮肉。

小道具の使い方も拝み倒したいほど的確。教科書のよう。
ライターと眼鏡に、あんなにも戦慄させられる日がくるとは!!!

そして、ラストはうまいことオチていて、ほんの少しユーモラスな雰囲気に。
最後まで完璧ね。
もう、ヒッチ先生の魔法にかかりました。圧倒的!

2013年9月17日火曜日

『悲しみは空の彼方に』

☆ダグラス・サーク監督/1959年/アメリカ

☆見るの・・・3回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・シブツタ「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので


大傑作。号泣して嗚咽してしゃくりあげてしまう映画。
原題はImitation of Life
理想化された現実、人生のイミテーション(模倣)。
劇化された虚構の現実。


女優を夢見るローラと、その娘スージー。
夫には先立たれている。

一方、黒人のアニーと、その娘サラジェーン。
白人の夫の行方は杳として知れない。サラジェーンは「見た目は白人」。

この二組の母娘が出会い、ともに暮らすようになり、
それから10年以上にわたるドラマを描いた作品。

舞台女優として成功したローラは、娘であるスージーと口論の際、
「そんな芝居はやめて。ここは舞台じゃないのよ」とか言われてしまう。
ストップアクティング、みたいな感じで(たぶん)。
芝居=偽り、ですからね。

サラジェーンは黒人でありながら白い肌をしている。
周囲には黒人であることを隠して、白人として生きようとしてる。
菩薩のような母アニーは「自分を恥じたり偽ったりすることは罪だ」と言い続けるけど、
サラジェーンはかたくなに反発する。


「イミテーション」というテーマを浮き彫りにするのが、「鏡」の存在。
特にサラジェーンに対して、鏡は容赦ない。
(ボーイフレンドに暴力をふるわれるシーンの残酷なやりきれなさたるや・・・)

そしてとうとうサラジェーンは家出、ダンサーになる。
心配して様子を見に行くアニー。
けれども、母娘だとわかると、周囲に黒人であることがバレてしまう。
アニーは娘を偽名で呼び、
サラジェーンはアニーのことを「ママ」と、どうしても声に出して呼ぶことができない。

当時の社会で黒人差別がどれほどのものであったのか、
こればっかりはいくらお勉強しても、根っこの部分がわからないというか、
わかった気になっては絶対にいけないことだと思う。
体感的には、本当にそこで暮らしてる人じゃないとわからないでしょう。
なので、サラジェーンがどうしてそこまで黒人とバレたくないのか、よくわからないけど、
娘のことを偽名で呼ばなくてはならない、
ママのことをママと呼べない、
この壮絶な悲しみはちょっと比類ない。
私はこのシーンを見て、今回も、しゃくりあげて泣いてしまいました。

サラジェーンに苦痛の概念を与えたのは社会の不条理さ。
そしてラスト、一見うまいこと哀しく&優しくまとまったように見えかねないけど、
不条理な社会は何にも変わっていない。
深い悲しみの余韻をまとったまま、物語は終わってしまう。

かわいそうなアニー。
この素晴らしい母親を見たら、誰もが、「もっと他人に優しくしよう」と思うでしょう。
私は思います。
泣き顔みたいな笑顔が忘れがたい。


悲しい物語を美しく謳いあげてしまう映画こそ、究極のイミテーションですね。
私はイミテーションにこんなにも魅せられてるんだー。
サークの魔法のような作劇術に。


最後にどうでもいいけど言及せずにいられないことをひとつ。
ダンサーになったサラジェーン、ダンスシーンが何度か出てくるのだけど、
どヘタもいいとこだ!!!
サラジェーンが踊るシーンは悪いけど笑っちゃうしモノマネしちゃうよ。
「先天的にリズム感がないとはこういうことなのか」って感じで。
あれは、ワザとヘタな人をキャスティングしたの??
気になるトコです。


ともあれ傑作。

『ぼくの彼女はどこ?』

☆ダグラス・サーク監督/1952年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(シブツタレンタル)

☆なぜ見たか・・・シブツタの「発掘良品」シリーズが100円で借りれたので!


発掘良品、380円もするから、普段は手が出ません。
けど100円クーポンが配信されてきたので、ダッシュでシブツタ行った。
ダグラス・サークいっぱい借りれて幸せ~~~。

19か20歳くらいのときにダグラス・サーク監督の存在を知って、
数本見たなかでも、これは抜きんでて楽しい作品。
『キャリー』の恐ろしい母でおなじみのパイパー・ローリーさん、
こんなにも愛らしいお嬢さんでした!!!
共演はロック・ハドソン。この人、193センチもあるらしい。
サーク作品の常連だけど、なんとなく加山雄三を思わせるよね。


大富豪のフルトン氏(チャールズ・コバーン)は、
ある事情から、自分の財産をブレイスデル家(パイパーローリーの家)に贈りたいと考える。
彼は貧乏な画家に身をやつしてブレイスデル家の下宿人になることに成功、
とりあえず10万ドルを匿名で贈って、一家の様子を観察。 という映画。

10万ドルを手に入れると、ブレイスデル家の母親は、一気に成金街道。
趣味の悪い服を着て、いけすかない金持ち連中と付き合い、
下宿人を追い出し、変なフレンチプードルを2匹も飼い始める。
そしてパイパーローリーに、庶民であるロックハドソンと付き合うのは止せ、と言い出す始末。

大金が舞い込んだあとのこの母親の俗悪なる行動は、コミカルなおとぎ話風に語られるので、
終始お金にまつわるお話なのに、深刻になりすぎず楽しい作品。
パイパーローリーの妹役も、ナナメから事態を見守る感じで、おもしろいキャラクター設定。
この妹ちゃんとチャールズコバーン(子供&老人)が実にいいコンビ。
いいですね~チャールズコバーン。青春よふたたび、って感じで、ハシャいでる。

もちろん、テクニカラーの美しさ、色使いの大胆さも最高!
ミュージカルナンバーとともに心を浮き立たせてやまない!!!
若きジェームズ・ディーンが7秒くらい出てきて、妙な厚かましさを放ってるお宝映像もあり。

2013年9月15日日曜日

『パンチドランク・ラブ』

☆ポール・トーマス・アンダーソン監督/2002年/アメリカ

☆見るの・・・2回め

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・PTA見直しブームで


4年か5年ぶりに見た。いいですね、好き!!!
これ、主演ふたりの「再会」シーン。
おしゃれなシルエットショットだなぁ。

アダム・サンドラー、好演。
繊細で情緒不安定で心優しい、たまにイカレちゃう寂しい男の役。
彼が終始着てる青色のスーツは、『バンド・ワゴン』でアステア様が着てた衣装をモチーフに
デザインされたそうですよ!!
(スーパーマーケットでタップを踏むシーンもある!!)

アダム・サンドラー氏は最後に、暴力の正しい使い道を発見する。
そしてこんなにもおっかない男を、恋の力で撃退する。
 
PTA組常連のフィリップシーモアホフマン!太ってる~!
彼はアダム・サンドラーのあまりに真っ直ぐな恋心にふれて、狂気すら感じて引き下がる。


「一生に一度の恋なんだ」なんて、大ミエ切って言われてみたい。
お互いに、どうして、どこに惹かれるのかなんて一切説明しない。
パンチドランク・ラブに理屈はないみたい。
アダム・サンドラーのキレ芸を受けるエミリー・ワトソンも妙にキュート。

ポップかつ美しい映像はミュージックビデオを見ているよう、
けれども、某ゴンドリーや某実花なんかとは一線を画する「映画的」なセンス!!!
いらいらするサンドラー、恋慕の情をつのらせるサンドラーを、的確にとらえてる。
PTAは何やらせても器用ですね!!

2013年9月13日金曜日

『青空に踊る』

☆エドワード・H・グリフィス監督/1943年/アメリカ

☆見るの・・・初めて

☆見た場所・・・自宅(地元ツタヤレンタル)

☆なぜ見たか・・・アステア様見たさに


私の永遠のアイドルともいえる、アステア様主演映画。
相手役をつとめるのはジョーン・レスリーさん。
と言っても、デュエットは一曲のみ。

この映画、アステア様があんまり踊らないのでさびしかったです。
全尺89分しかないのに、30分経っても踊り始めないのでオロオロしちゃった。

そんななかでアステア様が、異色のダンスを披露するシーンが。
同僚にそそのかされて、テーブルの上に立って踊らされる「スネーク・ダンス」。
ユーチューブで見つからなかったー、残念。
こんなバカっぽい意味不明のダンスをするアステア様を見たことがなかったので、斬新!
これも御自身で振付をなさったのかしら?


1943年制作ということもあって、かなり戦時色が強い。
アステア様の役どころは、日本軍を撃墜して英雄として一時帰国、
10日間の休暇を貰った米空軍飛行士。
やっぱりアステア様はトップハットと燕尾服だよね、と思わされるほど、
パイロット服がサマになってない・・・

あと私はこの映画、日本語字幕で見たんだけど、字幕のフォントが変だった!!
なんていうの?教科書体?
今までいろんな映画を字幕で見てきたけど、こんなの初めてでした。超どうでもいいけど。


ストーカーのようにジョーン・レスリーにつきまとい、あまり踊らないアステア様、
自分でもストレスが溜まったのでしょうか。
終盤、すべてを炸裂させるかのようなダンスシーンが!
下の動画、PCからどーぞ!!!まばたき禁止!
やぶれかぶれでストレス発散、狂ったように舞うアステア様・・・
バーカウンターを滑りながら踊る、でも、滑り具合まで完璧にコントロールされてる。
なんて素敵なの。天才だ!
私のアイドル。ヒーロー。


この映画の終わり方は、ハッピーエンドとは言い切れない。
戦地へ向かうアステア様、「必ず帰ってきてね」とジョーン・レスリー。
涙をたたえたジョーン・レスリーがアップで映る。お美しい・・・

どアップにも耐えうる、可憐な美人です。