2013年7月30日火曜日

『アタラント号』

☆ジャン・ヴィゴ監督/1934年/フランス

☆見るの・・・3回め

☆見た場所・・・シネマヴェーラ(渋谷)

☆なぜ見たか・・・以前にVHSで見て大感動して、ぜひスクリーンで見たかったので


夭折の天才ジャン・ヴィゴの残した、唯一の長編劇映画。
私が心から愛する映画のひとつ。
映画の持つすべての歓びと魅力が、この作品に集約されていると思う。
どこまでも自由で破天荒、愛とユーモアに満ちていて、詩的。

艀(はしけ)で生活する新婚夫婦の物語。
「いさかいと和解」という単純なテーマを、なんともロマンチックに描いてる。


せまくて単調な船での生活に飽き始めてパリに飛び出してしまった新妻ジュリエット、
慣れない街でひとりベッドに入る。
夫のジャンもまた、船のなかでひとりベッドに入る。
そしてお互いがお互いを想いながら、せつなさに身悶えする姿が
美しくオーバーラップされる。
それはもうとんでもなく官能的で、詩情あふれるラブシーン。
遠く離れたふたりが創る、なんとも先鋭的なラブシーン!

撮影監督はボリス・カウフマン。
『十二人の怒れる男』や『波止場』の彼ですね(波止場見たことないけど)。
ジャンが水中に飛び込んでジュリエットの幻影を見るシーンなんて、
美しすぎて涙なしには見られない。
ありがとうカウフマン氏!!!

ジャンとジュリエット、ふたりの和解のきっかけを作るのは、
同じ船上で暮らすジュール爺さん(ミシェル・シモン)。
常識破りで痛快、猫好きでどこかすっとぼけていて、愛すべきキャラクター。
身体じゅうに彫られたヘンな刺青が可笑しい。
圧巻なのは、長い船旅生活で手に入れた数多くのガラクタが
所狭しとならんでいる彼の部屋(in船)。

(それにしてもスゴい刺青。なんて言って発注したらこうなるのかしら)
コレクションは日本の扇子、とかの常識的なものから、昔の仲間(人間)の手まで。
そんなジュール爺さんの豊かで強烈な魅力の秘密を知りたくて、
彼のお部屋に入りたくて、繰り返しこの作品を見てしまうのかも。

『アタラント号』のジュール爺さんにしても、
『素晴らしき放浪者』のブーデュにしても、
私は人生で大切なたくさんのことをこの怪優ミシェル・シモンに教わったよ。


感動的な余韻につつまれるラストシーンまで、すみずみまで、
愛することや生きることの歓びに満ちてる。
この作品のきらめきはうまく言葉にできるものではないし、
何度見ても飽き足らない魅力があると思う。

こうして思い出しているだけで幸せな気分になれるもんなぁ~~~!

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